石破茂首相は24日午後、衆院本会議で昨年10月の就任後初めてとなる施政方針演説を行う。昨年の衆院選惨敗を受けて少数与党で臨む通常国会では困難な国会運営が予想されるが、外交でも厳しい現実を突きつけられた。昨年12月の岩屋毅外相の訪中で、福島第1原発の処理水海洋放出を受けて中国が強行した日本産水産物の輸入停止を緩和する方針を確認していたにもかかわらず、中国側は処理水を「核汚染水」と非難して禁輸を続けているのだ。「対中傾斜」が目立つ石破政権だが、なめられっぱなしでいいのか。
「福島核汚染水の海洋放出は国際公共の福祉に関わるものであり、日本の一方的な行動は近隣諸国や国際社会の懸念を無視している」
中国外務省の毛寧報道官は23日の記者会見でこう述べ、日本産水産物の輸入再開には中国が検査を続ける必要があるとして、日本側に水産物の安全性を保証する「有効な措置」を求めた。
だが、中国側の検査では安全性が確認されている。
中国国家原子力機構は同日、福島第1原発周辺で昨年10月に採取した海水を中国の研究機関が分析したところ、トリチウムなどの放射性物質濃度に異常はなかったと発表したのだ。毛氏は会見で「異常なし」が確認されたことに言及しながらも、「核汚染水排出に反対する中国の立場は変わらない」と強弁した。
石破政権は、習近平国家主席率いる中国との関係強化を図っている。石破首相は昨年11月に習氏と会談を行い、同年12月には訪中した岩屋氏が李強首相や王毅外相と面会して「戦略的互恵関係」の推進を確認した。
中国の行動、石破政権の対中姿勢をどうみるか。
評論家の石平氏は「国際原子力機関(IAEA)が処理水について、『国際的な安全基準に合致している』として問題がないとしているにもかかわらず、中国側は理不尽な難癖をつけてきた。ドナルド・トランプ米政権の対中強硬姿勢を受け、中国は日本を篭絡(ろうらく)しようとすり寄ってきているが、中国側がいつでも、水産物以外の日本からの輸入品も止める可能性があるということを忘れてはならない。石破政権は中国人向けのビザ発給要件を緩和する方針を示すなど中国側に譲歩しているが、中国への依存は禁物だ」と話した。