日本周辺の権威主義国家による威圧がエスカレートしている。中国とロシアの爆撃機計4機が先月末、2日間にわたり沖縄周辺を共同飛行した。防衛省統合幕僚監部が発表した。米ドナルド・トランプ次期政権を見据えて国際情勢も混沌(こんとん)とするなか、中露の行動は何を意味するのか。
11月30日午前から午後にかけて沖縄周辺を飛行したのは、中国のH6N爆撃機2機と、ロシアのTU95爆撃機2機の計4機だった。29日も日本周辺を飛行していた。
統幕によると、4機は大陸側から飛来し、沖縄本島と宮古島の間を太平洋に向けて通過。その後、反転して同じエリアを通って往復した。周辺では他にも中国軍の戦闘機や情報収集機、ロシア軍の戦闘機が確認された。防衛省は「わが国に対する示威行動を明確にするもので、安全保障上重大な懸念だ」とした。
昨年12月にも中露の計4機は日本海で合流し、対馬海峡から東シナ海へ共同飛行している。
11月29日には、中露の軍用機計11機が韓国の防空識別圏に約1年ぶりに進入した。韓国軍合同参謀本部が同日、発表した。この際、中国国防省は、中露両軍が年次計画に基づき、日本海上の空域で29日に「合同戦略パトロール」を実施したと公表した。
中露の狙いについて、元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「中露は現在、北朝鮮がロシアに協力して派兵するなかで微妙な関係ではあるが、トランプ政権の2期目で中国にとって好ましくない状況になることを見据えている。共同飛行という形で関係を示しておく必要があるのだろう」とみる。
米台関係にも動きがある。台湾の頼清徳総統は就任後初の太平洋島嶼(とうしょ)国3カ国に外遊で、米ハワイ州と米領グアムに立ち寄る。
渡部氏は「今回の訓練は、定期的なものと考えられるが、中国が台湾に武力侵攻した際、朝鮮半島で北朝鮮が行動を起こし、ロシアが協力するなど同時に有事が発生する事態を想定したものも含まれているかもしれない」とみる。
日本の外交、安全保障に向き合う姿勢も問われている。
「石破政権の脅威認識に不安」
渡部氏は「ロシアにとって制裁を科す日本が目障りになっている。日本は厳しい状況に立たされているにもかかわらず、石破茂首相は『アジア版NATO(北大西洋条約機構)』や『日米地位協定の見直し』などを主張しており、理想主義でリアルな安全保障観があるか疑問だ。中露への態度や脅威の認識が甘いのではないか」と語った。