ニッポン放送の番組で、世界的投資家のジム・ロジャーズさんと対談した。昨年共著で出版した『大暴落』はベストセラーとなった。
ジムさんは、「2025年は米国や、日本を含む世界で、何らかの(金融)問題が表明化してもおかしくなく、大きな弱気相場を予想している」という。ジムさんは最近、『日銀が日本を滅ぼす』(SB新書)を出版した。日銀は、昨年17年ぶりに利上げを決めたが、「これほど長い間、低金利を維持するのは正しくなかった」という。
円安物価高でも、日銀は機動的に金利を上げられない。金利を上げれば、大量に国債を発行している政府の利払い費が増加する。日銀も債務超過に陥り、国債の格付けの引き下げになりかねない。
植田和男総裁が金利を上げていく方針を示したが、実際上げていけるかは、ジムさんも私も疑問をもっている。本来、金利は市場に委ねるべきだといい、ジムさんは、適正な金利水準は5%ぐらいだろうという。
しかし、その水準になれば、多くの中小企業は倒産し、住宅ローンの変動金利に耐えられない家庭も多く出て来る。低金利を維持すれば、日米金利差は広がり、円安物価高はますます進む。日銀は八方ふさがりだ。
無論、日銀に国債を押し付けてきたのは、政府であり政治家だ。ジムさんは、痛みを伴う改革は避けられず、国の債務を減らし、人口を増やすしか解決策はないという。
しかし、自民党は今、少数与党でもあり、痛みを伴う政策を訴える力はない。少子化の解決策として、ジムさんが提唱し続けている移民政策も、国民に不人気で、各政党が触れたがらない。来年度予算案も、過去最大で、財源も国債発行ありきで組まれている。たしかに理屈上は、日銀はいくらでもお金を刷れるが、ハイパーインフレという、実質、財政破綻を迎えるしかないとジムさんも私も思っている。Xデーはそう遠くないと感じる。
ジムさんの現在のポートフォリオは、ほぼ現金に近い米ドルだという。世界的な暴落があっても、相対的に米ドルの信用がいちばん高いと強調していた。私も同じ考えだ。残念ながら、高齢の人ほど、日本人は日本円を信用している。資産は日本円だけで、収入は年金生活という人は、ハイパーインフレが起きたときに一番被害が大きい。
ワタミの宅食は、高齢の方がお客さまであり、何が起きても事業継続できる体制を意識している。昨年末、「ワタミの宅食ダイレクト」が「HonNe Award 2024~宅食サービス部門~」で総合満足度ナンバーワンを受賞した。うれしいとともに、高齢者の食を支える重責にしっかりと応えていきたい。
今年は年金生活者の生活を守るための大きな発表も準備している。「日銀が日本を滅ぼす」―。そうしないために、政治には「責任政党」が必要だと強く感じる。 (ワタミ代表取締役会長兼社長CEO)