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ぴいぷる 歌手・角川博 だまされ続けて49年…「皆さんが聴きたい歌を歌うだけです」 70枚目、最新シングル『恋泣きすずめ』リリース

zakzak by夕刊フジ 2024年9月13日 11時0分

だまされ続けて49年

この人に話を聞くのは面白くて仕方がない。ジョークやエピソードを交えながら、よくしゃべってくれる。でも、期待すると肩透かしを食らってしまう。実はそれがサービス精神からあふれてくるものであり、しかも核心をついているのだ。

「何を期待されているのかなと思いながら答えるんですけど、裏切っちゃうんですよ、私」とさらりと話す。

「角川さんにとって、歌とは」と尋ねたときのことだ。返ってきた答えは…。

「やっぱり食べる糧ですよ、家族を養っていかなきゃいけないし。僕、この世界にだまされて入ってますからね(笑)。(西城)秀樹みたいな歌が歌えると思っていたのに、なんか訳の分からない歌を歌わされて(笑)」と思わぬ方向に。

49年前、ポール・アンカやエルヴィス・プレスリーを聴いていた青年が演歌でデビューした。

「(所属していた)事務所が大きかったから、秀樹のバーターでテレビに出してもらえて。ドリフの番組にも出て、ものまねもやって、曲は売れなかったけど、顔は売れて。なんじゃらほいですよ。何しにこの世界に入ったんだと。いっそ地元に戻ろうかとも思ったけど、まあ、これも僕の人生かと思い、49年やってきたの。歌は好きだけどこのジャンルは好きじゃないね。お仕事だから歌っている。でも、これはファンに見せちゃったらダメ。見せちゃダメだけど、しゃべっちゃうんだけどね(笑)」

これって、やっぱりサービス精神なんだろう。自身70枚目となる最新シングル「恋泣きすずめ」(キング)についても、彼らしい表現をする。

「みんな歌ってくれるんじゃないかな。だからスタッフとしてみたら、商売になる歌だよね。そういった意味でいいお仕事ができたなと思いますよ。さっきも言ったけど、僕は別に趣味で歌っているわけじゃなくて、仕事で歌っているんで。やっぱりいい仕事をしてくれる歌じゃないとね」

偶然2羽のすずめが

そういうと、携帯を取り出して1枚の写真を見せてくれた。そこには、2羽のすずめがなかよく並んでいた。

「この歌のこともあって、ウオーキングをやっているとき、すずめを探しながら歩いているんだよ。最近はなかなかすずめっていないんだよ。そんなとき、ようやく見つけたから写真に撮ろうと思って。するともう1羽やってきてさ。ほら。なんか、この曲の宣伝に使えそうかなって」

なんだかんだ言っても、歌への思いは人一倍強い。この歌へのアドバイスも聞いてみた。

「この歌は〝つらいのよ、つらいのよ〟って歌詞をつらく歌わないことだね。もう、歌詞につらいって書いてんだからわかっているわけよ。それをあえて明るく歌う。笑顔で〝つらい、つらい〟って言ったほうが響くんです。演歌はね、こねくり回して歌うんじゃなくて、自然に歌えばいいんですよ、ナチュラルに。そのほうがビシッと伝わるから」

そんな歌の境地にたどりつくには、あるきっかけがあった。

「もう少し下手に歌えばいいんですよ。そうするとうまさが隠れて、逆にこの人、うまかったんだなって思われる。僕、誰かに言われたことあるんですよ。もう少しは下手に歌えよって。で、気づいたの。うまいって言われるのって、大体が抑揚のつけ方なんです。感情を入れすぎなんです。こぶしも抑揚も、1曲の中に1回ぐらいでいいぐらい。下手に歌うって言うと語弊があるけどね」

来年はいよいよ50周年の節目の年を迎える。その意気込みを聞くと、「まだ49年に入ったばっかりですから、あまり50年のアピールをしてもしようがないし、50周年って言っても、1年1年の積み重ねですから、48年目も49年目も大事なわけですよ。49年があるから50年もあるわけで。それはそれで、過ぎていけばいいかなと思っているんですね」とにべもない。

そしてその先はどのように見ているのだろう。

「考えてないですね。行き当たりばったりですから。いただいた曲を、いかに歌っていくかが歌い手の仕事。僕の好き嫌いは言わないで、皆さんが聴きたい歌を歌うだけです。そっちのほうがいいでしょう」

シニカルなようでいて、やっぱりサービス精神に満ちているのだ。

(ペン・福田哲士 カメラ・安元雄太)

70枚目、最新シングル『恋泣きすずめ』リリース

■角川博(かどかわ・ひろし) 歌手。1953年12月25日生まれ、71歳。広島県出身。76年4月、「涙ぐらし」でデビュー。第18回日本レコード大賞新人賞や第9回日本有線大賞新人賞などを受賞。78年には「許してください」でNHK紅白歌合戦に初出場した。70枚目のシングル「恋泣きすずめ」をリリースした。

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