今季日本ツアー賞金王に輝いた金谷拓実(26)。米ツアー最終予選会(最終日15日、米フロリダ州・TPCソーグラス)では3位に入り、来季米ツアー出場権を獲得した。すでに海外メジャーなどでも活躍してきたが、待望の米ツアー本格参戦が実現して、うれし涙を隠さなかった。
ショット、アプローチ、パターともに安定感があり、アマチュア時代から経験も豊富。国内ツアー屈指のテクニシャンで、米ツアーでもまれることでどこまで伸びていけるか期待は大きい。
特徴は172センチ、75キロの体全体を使ってフィニッシュまで振り切るフルスイングだ。ワイドスタンスで重心を低く構え、脚の力で体の向きを変えるようにして、大きな振り抜きを実現している。
バックスイングでは右ひざ、右股関節を深く曲げ、意識的にウエートを右サイドに乗せる動きがある。飛距離を出すための動きを取り入れているということだろう。最近は下半身を静かに使って、上体と下半身のひねり戻しを主体にしている選手も多いので、金谷は下半身の動きが大きいタイプといえるだろう。
トップからダウンスイングへの切り返しでは右脚を伸ばして地面を押すように圧力をかけ、強烈な腰のターンを発生させる。脚を使ってスイングをリードすると、ウエートシフトが早くなって目標方向へ体が動きやすいが、金谷の腰の回転はほぼその場で行われている。
むしろ腰は右脚の上で回っているようなイメージで、左サイドへのウエートシフトは緩やか。上体を十分に右に残しているため、フォローでクラブを縦に高く抜いていくことが可能になっている。C字型のフィニッシュのシルエットはどちらかといえば伝統的なスイングといえるかもしれない。
もう一つ、大きな特徴はスイングのタイミングだ。トップからの切り返しで、クラブと下半身のターンの始動を完全に一致させている。通常は下半身を先行させ、タイムラグをつくることでためをつくったり、リズムをつくるのだが、金谷はこのためをつくる動きが非常に小さいといえる。
極端ではないが、トップで一瞬止まるようにしてシャフトの暴れを抑え、次の瞬間、腰が回転を始めると、クラブも同時に動き出すようなイメージ。見方によってはクラブヘッドが動き始めてから、腰の動きをこれに合わせて回転させているような感じでもある。
振り遅れがないことが、正確なショットの秘訣だろう。
■金谷拓実(かなや・たくみ) 1998年5月23日、広島県呉市出身。5歳からゴルフを始める。広島国際学院高時代の2015年「日本アマ」制覇。東北福祉大2年時には「アジア・パシフィックアマチュア選手権」で優勝し、「マスターズ」と「全英オープン」へ出場。19年「三井住友VISA太平洋マスターズ」で史上4人目のアマ優勝。20年にプロ転向し、同年「ダンロップフェニックス」でプロ初優勝。2023年「BMW日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ」でメジャー初勝利。通算7勝。