新しい年が明け、近づいてきた「会社員生活の終わり」に向けて準備を始める人もいるのではないでしょうか。
60歳で定年後も同じ会社に再雇用されることが普通になってきましたが、ジョブズリサーチセンター(リクルート)によると、再雇用を選択する会社員は約7割です。つまり、3割の人は同じ会社での再雇用を望みません。
中には、働くこと自体を希望しない人も多いでしょうが、継続して働きたい人は、アルバイトを含む再就職か、個人事業主または法人設立による新規開業を選ぶことになります。
リクルートによると、多くの企業は既存従業員の雇用維持に取り組んではいるものの、新しくシニア世代を採用にすることには7割弱が「積極的ではない」という結果です。つまり、アルバイト・パートを含めても再就職は難しいのが現実です。
残るはフリーランスなどの個人事業主か、法人設立による新規開業です。しかし、これにはリスクを感じる人が多いでしょう。
新規開業の実態を知るために日本政策金融公庫「2024年新規開業実態調査」を見てみます。この調査は2023年4月から同年9月にかけて同公庫が融資した開業後1年以内の全世代の開業者に聞いたもので、シニア世代に限ったものではありません。しかし、大まかに「近年の新規開業の傾向」をつかめると思います。
まず新規開業者の年代ですが、50代以上の人が全体の約27%を占めています。新規開業者のなんと4分の1以上が50代以上のミドルシニア、シニアなのです。
新規開業者が開業するに至った動機(複数回答)を見ると、「自由に仕事がしたかった」(約57%)、「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」(46%)、「収入を増やしたかった」(約45%)が上位回答に並びます。
新規開業者が開業にかかった費用は、「250万円未満」が約20%、「250万円~500万円未満」が約21%。つまり500万円未満で開業した人が4割です。
また、「事業所までの通勤時間」は「1分未満」が約29%、「1分~15分未満」が約30%でした。「1分未満」ということは、自宅を事務所にしたのでしょう。
新規開業者の現在の月商(ひと月あたりの売上高)は約40%の人が「100万円未満」と答えています。必要経費などを差し引くと、手取り収入はさらに下がるでしょう。
新規開業者が「苦労したこと」(複数回答)としては、「開業時」は「資金繰り、資金調達」が約60%、「顧客・販路の開拓」が約49%、「現在」は「顧客・販路の開拓」が約48%、「資金繰り、資金調達」が37%と、やはりお金に関わる悩みです。
そんな苦労を経て、新規開業した人たちですが、満足度は、「かなり満足」が31%、「やや満足」が約44%で、7割以上の人が「満足」しているようです。
こうしてみると、近年の新規開業者の多くは「小さく開業」し、「小さく回している」ようですが、それでも「満足感は高い」ようです。新規開業を選択肢にするときは、このあたりが参考になるかもしれません。
■藤木俊明 副業評論家。自分のペースで働き、適正な報酬と社会とのつながりを得ることで心身の健康を目指す「複業」を推奨。著書に『複業のはじめ方』(同文舘出版)など。