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ドクター和のニッポン臨終図巻 歌手・園まりさん 長年にわたり乳がんで闘病、最期まで強かった「三人娘」の絆 中尾ミエさん「悔いのない人生だった」

zakzak by夕刊フジ 2024年8月12日 10時0分

昭和のアイドル「三人娘」といえば僕らの世代は、「花の中三トリオ」といわれた山口百恵さん、森昌子さん、桜田淳子さんでした。

しかし僕より少し先輩方は、伊東ゆかりさん、中尾ミエさん、そして園まりさん、と言うでしょう。

その三人娘のおひとり、「逢いたくて逢いたくて」「夢は夜ひらく」など、独特の唄い方で人気を得た歌手の園まりさんが、7月26日に都内の病院で亡くなりました。享年80。死因は、急性心不全との発表です。園さんは、長年にわたり乳がんで闘病されていました。中尾ミエさんが先日テレビにご出演された際、

「私たちは前から知ってて。乳がんだったからね。最後はもう緩和ケアに入って。自分で最後を分かってたんで。だから、お見舞いに行ったりなんかしても穏やかで。悔いのない人生だったと思う」

というお話をされていたので、死因は急性心不全ですが、突然死というわけではなさそうです。

園さんが、乳がんと診断されたのは、2007年のこと。その1年ほど前から、顔の火照りや、体温の変動などによる更年期症状に悩まされ、婦人科に相談。女性ホルモン補充療法(HRT)を勧められ、検査を受けたところ、乳がんが発覚したといいます。

更年期症状に苦しむ女性の中には、ホルモン補充療法を受けるか否か悩んでいる人も多いようです。この治療によって、乳がんや子宮がんのリスクが上がるという噂を聞いて、躊躇(ちゅうちょ)しているのだという人が大半です。確かに、わずかながらがんのリスクが高まるというデータが出ています。

そのため、ホルモン補充療法を受ける人は定期的に乳がん検査や子宮の検査をしなければなりません。逆に言えば、この治療を受けている人は早期発見ができる状況が作れるということ。

園さんも、ホルモン補充療法がきっかけで乳がんの早期発見ができたといえるでしょう。翌年には手術を受けて、回復されました。園さんは、乳がんと診断された時点では、しこりも見当たらず、がんの症状は何も感じていなかったといいます。このように、別の治療を受ける際の検査でがんがわかったなら、早期発見でラッキーだと考えたほうがいいでしょう。

一度は回復した園さんでしたが、手術から11年後の19年に再発。乳がんのタイプによって、10年後以降に再発する人も少なくありません。しかし再発後も10年以上がんと共存し、元気にされている人もたくさんいます。

生涯独身を通された園まりさん。三人娘の絆は強く最期まで中尾さん、伊東さんが見守っていたようです。弱ったときに、傍(そば)にいてくれる人こそが本当の友達。真の友情は、老いてからわかるものです。

■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。公益財団法人日本尊厳死協会副理事長としてリビング・ウイルの啓発を行う。映画『痛くない死に方』『けったいな町医者』をはじめ出版や配信などさまざまなメディアで長年の町医者経験を活かした医療情報を発信する傍ら、ときどき音楽ライブも。

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