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江崎道朗 国家の流儀 憲法改正で自衛隊を正式な軍隊とせよ 国内法と国際法で矛盾、デタラメ解釈で現実ごまかすな 自民党総裁選テーマの一つに

zakzak by夕刊フジ 2024年8月21日 6時30分

9月の自民党総裁選が盛り上がってきた。小林鷹之前経済安保相(49)は19日、国会内で出馬会見を開き、「新たな自民党に生まれ変わる」「経済こそ国力の源泉。今はアクセルを踏むとき」「美しい国土、海と空を守り抜く」「憲法改正は先送りできない。(早期発議に向けて)最大限の熱量で取り組む」などと述べた。総裁選は、10人程度の出馬が取り沙汰されているが、正式に名乗りを上げたのは初めて。憲法改正は、「日本初の女性宰相」に期待される高市早苗経済安保相(63)や、国民的人気の高い小泉進次郎元環境相(43)も前向きだ。麗澤大学客員教授・情報史学研究家の江崎道朗氏は「自衛隊を正式な軍隊と位置付けよ」と提案した。

自民党総裁選のテーマの1つが憲法改正だ。

岸田文雄首相は7日、自民党の憲法改正実現本部の会合で、「憲法への自衛隊の明記」について今月中に論点整理を行うよう指示した。

なぜ自衛隊の明記が必要なのか。自民党の公式サイトには次のように説明されている。

現状では、《自衛隊の活動は多くの国民の支持を得ている一方、自衛隊について①合憲と言う憲法学者は少なく②中学校の大半の教科書が違憲論に触れており③政党の中には自衛隊を違憲と主張するものもある》

よって、《憲法改正により自衛隊をきちんと憲法に位置づけ、「自衛隊違憲論」は解消すべき。その際、現行の9条1項・2項とその解釈を維持し、自衛隊を明記するとともに自衛の措置(自衛権)についても言及すべき》というのだ。

要は、憲法に自衛隊を明記して違憲論を解消しようというわけだ。

これに対して、公明党や野党も自衛隊を明記する改憲案を提示している。例えば、日本維新の会は2022年に9条2項を「前条(現行9条)の範囲内で、法律の定めるところにより、行政各部の一として、自衛のための実力組織としての自衛隊を保持する」と加筆する案を公表している。

一方、公明党の北側一雄副代表は23年に、「72条(内閣総理大臣の権限)もしくは73条(内閣の職権)に自衛隊を明記」する案を言及した。

国民民主党も同年に憲法第5章の「内閣」の中に、「必要な自衛の措置を取るための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」とする玉木雄一郎代表案を示している。

そして、自民党の中には「72条もしくは73条に自衛隊を明記」する公明党案で妥協しようという動きがある。だが、これだと自衛隊は合憲になるかもしれないが、「自衛隊は軍隊ではない」という政府解釈を固定化し、国防を危うくすることになりかねない。

政府は、自衛隊について、《国内法上、国の行政組織(防衛省)に属する一組織であり、少なくとも諸外国でいう「軍隊」ではない》が、《自衛隊及び自衛官は、その名称にかかわらず国際法上、自衛隊は軍隊》と解釈している。

要は、「自衛隊は国内法上軍隊ではないが、国際法上軍隊扱いされる」と、矛盾したことを述べているわけだ。しかも、このデタラメな解釈にこだわる日本政府と国会が、自衛隊を国内法でがんじがらめに縛って、いざというとき国防の任を果たすことができないようにしている。

だが、誰がどう見たって自衛隊は立派な軍隊だし、国際社会も日本が軍隊を保有していると見なしている。何しろ、日本政府自身が対外的には自衛隊は国際法上の軍隊だと主張しているのだ。

よって、いま必要とされているのは、「国際法上、自衛隊を軍隊とみなしている」政府解釈と国際世論を踏まえて憲法上でも自衛隊を正式な軍隊と位置付けることであるはずだ。

国防のため軍隊を保有している現実をごまかすのは、そろそろ止めようではないか。

■江崎道朗(えざき・みちお) 麗澤大学客員教授・情報史学研究家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに従事。「江崎道朗塾」を主宰。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、23年にはフジサンケイグループの「正論大賞」を受賞した。著書・共著に『シギント―最強のインテリジェンス』(ワニブックス)、『ルーズヴェルト政権の米国を蝕んだソ連のスパイ工作』(扶桑社新書)、『日本の軍事的欠点を敢えて示そう』(かや書房)など多数。

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