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選択的夫婦別姓「延命のため何をするか分からない」自民党内で石破首相への警戒感増大 部分連合へ立民と取り引きも懸念

zakzak by夕刊フジ 2025年1月28日 15時30分

ジャーナリスト椎谷哲夫氏緊急リポート

選択的夫婦別姓への石破茂首相(自民党総裁)の言動が揺れ動いている。党内が推進派と反対派で割れるなか、ネット番組で「折衷案」に言及した一方、27日の衆院本会議では「いつまでも結論を先延ばししてよい問題とは考えていない」と語り、党内の意見を集約するワーキングチームの幹事長と事務局長に推進派を送り込んだ。立憲民主党との「部分連合」を見据えて、「党議拘束」を外すのではとの疑念も消えない。党内では「首相は延命のためには何をするか分からない」との警戒感も広がる。ジャーナリストで皇學館大学特別招聘教授、椎谷哲夫氏の緊急リポート。

「(選択的夫婦別姓の導入と反対の)どちらの考え方にも偏れないとするならば、折衷案もありうべしと思う」「党をまとめる立場になると『俺の考え方(=別姓推進)についてこい』とならない」

石破首相は26日配信のネット番組でこう語った。具体案には触れなかったが、「折衷案=旧姓の通称使用拡大」と報じたメディアもあった。

元日のラジオ番組で、石破首相は立憲民主党の野田佳彦代表を「長い友人で、裏切られたことが一度もない」「大連立は選択肢としてある」と語った。「今年度予算案」と「選択的夫婦別姓」を取引するとの見方は強い。

しかし、内閣府や産経新聞、読売新聞、JNN(TBS系)などが実施した「3択の世論調査」を見れば、「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用を広げる(法的根拠を持たせる)」と答えた人が圧倒的に多いのだ。

推進派の深刻な難題は「子の姓をいつ決めるか」だ。「婚姻の際に決める」となると、決まらない場合は婚姻届自体が受理されず、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」とする憲法24条に反しかねない。立憲民主党の「出生時に決める」方法にも無理がある。夫婦で決められなければ家庭裁判所に委ねるというが、裁判官は何を基準に決めるのか。

選択的夫婦別姓が、必然的に「親子別姓」「兄弟別姓」につながることへの懸念も強い。

自民党の慎重派は「旧姓の通称使用」に一定の法的根拠を与えるための法案作成を急いでいる。

党幹部の発言も要注目だ。

坂本哲志国対委員長は21日、自公幹事長会談に同席した後、記者団に「議論すればするほど課題があるということを(自公両党が)認識した」と拙速を戒めている。

自民党の森山裕幹事長は22日、時事通信などのインタビューで、「国民の気持ちもよく考えないといけない」「わが国の歴史、国の形などを考えると、党議拘束を外すことには慎重であるべきだ」と語り、夫婦別姓の関連法案が採決される場合、党所属議員が賛否をそろえる党議拘束が必要との認識を示した。

分かりづらいが、森山氏は党議拘束がなければ党内の推進派が立憲民主党などの法案に賛成し、慎重派が反発して党が分裂するとの危機感がある。つまり、石破首相を牽制(けんせい)したようだ。

こうしたなか、石破首相の「折衷案」発言は、政権延命のために「石破包囲網」から逃れるための「目くらまし」という指摘もある。

慎重派が多い党内保守派の信頼が厚い麻生太郎元首相は22日、旧安倍派や茂木派などの中堅・若手メンバーを加えて会食をした。「派閥横断の勉強会」という位置づけだが、今後の政局を見据えた動きであることは明らかだ。

■椎谷哲夫(しいたに・てつお) 1955年、宮崎県生まれ。早稲田大学政経学部卒、同大学院修士課程修了。中日新聞社(東京新聞・中日新聞)で、警視庁、宮内庁、警察庁などを担当し、編集委員、関連会社役員などを経て退社。著書に『夫婦別姓に隠された〝不都合な真実〟』(明成社)、『皇室入門』(幻冬舎新書)など。

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