東京女子医大(東京都新宿区)の新校舎建設工事をめぐって、大学に不当な報酬を支払わせて約1億1700万円の損害を与えたとして背任容疑で警視庁捜査2課に逮捕された同大元理事長、岩本絹子容疑者(78)は、自身に権限を集中させることで「独裁体制」を築いたとされる。その権力の大きさから、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長に例える報道もある。
大学によると、岩本容疑者は創立者・吉岡弥生の一族で、1973年に東京女子医大医学部を卒業後、81年に江戸川区で産婦人科を開業した。2014年に副理事長に就任して経営再建を主導し、19年に理事長となった。
同窓会組織の会長を兼務して自身に権限を集め、経営方針への反発を許さなかったという岩本容疑者に対しては、教職員も〝恐怖〟を抱いていたようだ。大学の第三者委員会が実施したアンケートで「岩本氏らを批判すると、何らかの不利益な扱いを受けるおそれがあると感じるか」と聞いたところ、「強く思う」「ある程度そう思う」との回答が73・5%に上った。
「口がうまく、医者というより政治家だ」(大学OG)との評もあり、大学の清水治理事長は記者会見で「岩本容疑者の専横的な意思決定を牽制(けんせい)できず、ガバナンス(組織統治)を発動できなかった」と述べた。
大学に支払わせた報酬の一部は岩本容疑者に還流されたとみられており、警視庁は事件の全容解明を進めるとともに、岩本容疑者の側近も任意で捜査している。