『創』11月号の巻末、篠田博之編集長の「読者の皆様へお願い」は読んでいて辛かった。
<本誌は私・篠田が編集長兼発行人を務めてから40余年、その前を含めると50余年の歴史を持つ雑誌ですが、今回ちょっと厳しい状況を迎えました。>
要するに大手印刷会社(大日本印刷)が不採算の出版印刷部門を縮小、『創』は来年4月から新たな契約を結ぶことになった。その際、数百万円の資金が必要となったというのだ。
<今はこのままだと自力で乗り切るのが難しい状況です。>
<そこで心苦しい限りですが読者の皆様にご支援を仰ぎたいと思います(中略)ぜひ経済的支援をお願いできないでしょうか。>
そうなのだ。
書籍、雑誌印刷では業界トップだった大日本印刷だが、今や、包装、プラスチック、あるいはICカードや光カードなど電子精密部門が拡大。しかも書籍、雑誌の部数減で出版印刷部門は縮小の一途だから、部数の少ない雑誌は引き受けたくないというのが本音だろう。
他人事ではない。
最近、『創』のページがどんどん減って、薄くなっていたので心配していたのだが。
篠田さんとは思想信条、編集する雑誌の内容は全く違う。なにしろ、『創』には佐高信さんや、望月衣塑子さんたちが連載しているのだ。
けれど、雑誌の編集が大好きという点で通じ合うものがあり、付き合いは長い。
凶悪な事件を起こした犯人にも、その言い分を聞くという、篠田さんのジャーナリスト魂は高く評価している。
古くはパリ人肉食事件の佐川一政氏、幼女連続誘拐殺人事件の宮崎勤元死刑囚、ロス疑惑の三浦和義氏、最近では相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で19人を刺殺した植松聖死刑囚などにも接触、手記などを掲載したのは篠田さんならではだろう。
最近、連載していた連合赤軍、吉野雅邦受刑者の獄中手記も同じ時代を生きた者として、興味深く読んだ。
むろん、そんなに部数の出る雑誌ではないから、『創』を出し続けるために篠田さんが、どれほど苦労していたかもよく知っている。
取材から執筆までほとんどひとりでこなし、なのに自分の給料は受け取らず、それどころか自分の家を抵当に入れて数千万円借金していると聞いたこともある。
かつては、毎年出す『マスコミ就職読本』3冊がドル箱で、本誌の赤字を補っていたが、就職情報がネットに移ったのも痛手だったようだ。
で、篠田さんの「カンパのお願い」の結果だが。
12月号の巻末で篠田さんはこう書いている。
<半年以内に数百万円用意しないと本誌が休刊になってしまうと前号でカンパのお願いをしたところ、予想を超えるありがたい反応を頂きました。50万円、100万円という高額のカンパをしてくれた方もいて、約300万円が集まっています。>
<読者の方々があまり反応してくれなければ力不足と受け止めて潔くやめようと思っていたのですが、これは簡単にやめるわけにはいかないなと叱咤激励として受け止めました。>
とり敢えず、休刊という最悪の事態は避けられそうでホッとした。
最近は不整脈など体調もよくないらしいが、篠田さんにはまだまだ頑張ってほしいと、エールを。 (月刊『Hanada』編集長・花田紀凱)