Infoseek 楽天

川尻哲郎「TIGER STADIUM」店主敬白 「怒られ覚悟で言いますが…岡田監督はいい意味で〝ワンマン〟」来季続投は…世間が注目 阪神、V逸「危険水域」を跳ね返せ

zakzak by夕刊フジ 2024年8月20日 15時30分

私の店に足を運んで下さるお客さんには本当に頭が下がります。先週はお盆休みや台風やらで普段より少なめではありましたが、阪神タイガースが苦戦続きでも熱量に変わりはありません。試合が敗色濃厚でも、好プレーが出たら「いいぞ、いいぞ!」と喜び、「まだまだこれから!」と最後まで懸命に盛り上がってくれて…。逆に私が励まされている感じがします。

阪神OBとして球団初の連覇を願いつつ、同時にスポーツバーの経営者の立場では、あらゆる事態を想定しておかなければならず…、ついつい良からぬことも考えてしまいます。もっか首位広島に5ゲーム差をつけられる一方で、4位DeNAにも3・5差。もしもクライマックスシリーズ出場まで逃せば、営業的にも天国から地獄です。「9月の閑古鳥だけは勘弁して!」と最近、酒の量も増えて困ってます。

酔った勢いで言うわけではありませんが、今までお客さんのことも考えて言うのを我慢してきたけれど、阪神はもうとっくに「V逸の危険水域」に突入しています。「勝負の9月」を前にした大事な時期に中日、ヤクルトと下位球団に無駄な負けを献上するなど4カード連続負け越し中。昨季リーグMVPの村上まで2軍落ちするなど自慢の強力投手陣は疲労困憊で、勝てる試合も落とす現状はかなりヤバい。

今さら言うかと怒られそうですが、今季ここまでをざっくりと振り返ると、作戦上手なはずの岡田監督の仕掛けが遅過ぎました。昨年の日本一メンバーを信頼し過ぎて、前半戦は選手任せ。なんとか点を取りにいくような采配がほとんどないなか、皮肉なことに打線は貧打が慢性化していきました。佐藤輝ら主力の大半が続々と2軍落ちしたのは異常な光景でした。岡田監督は将来を見据えたチーム強化を目指したのでしょうが、昨季頑張った木浪が今季は打率1割台に低迷しているように、2年続けて活躍できるほど選手たちは「大人」ではなかったということです。

後半戦に入って岡田監督も初回からバント、エンドランと動くようになりましたが、なかなか結果には結びつかない。投打の歯車もかみ合わず、守備でのほころびも目立ち始めました。監督の最近の敗戦コメントでは、恒例のボヤキから「コーチに聞いてくれ」「オレ一人だけが怒ってるみたいや」と発言も変化しています。こんなはずじゃ…と現実逃避したい心境かもしれません。

怒られ覚悟で言いますが、岡田監督はいい意味で「独裁」「ワンマン」。でも、昨年のように勝っている時はいいけど、ダメな時は一気にガタガタになってしまう危険性はある。負けが込んでくると実際、ベンチ内でもいろんなことが起きているでしょう。そんな中で選手はよくやっている方だと思っています。

今後はペナントレースの行方と同時に、契約最終年の岡田監督が来季続投するかどうかも世間の注目になるでしょう。でも、選手はその手の人事に惑わされず、残り試合では「挑戦者」として自分のやるべき役割を見直し、全うしてほしい。選手生活は続くわけですから自分の成長、来年以降のプレーにつなげることが大切です。

散々偉そうに夢も希望もないことを言ってきましたが、V逸の危険水域に入っていてもまだギリギリ間に合います。逆転優勝を諦める必要はありません。一戦必勝で広島、巨人との直接対決を残り全部勝って、怒涛の10連勝でも決めれば当然状況は変わります。ほんの3年前、矢野阪神が無念のV逸に泣いた2021年を思い出してください。シーズン終盤で高津監督率いるヤクルトが一気に調子を上げて9連勝、13戦負けなしの大攻勢で阪神から首位を奪い、まさかの大逆転優勝をかっさらっています。アレを今度は阪神がやり返したらいいんです!

岡田監督の手腕、選手の底力を今こそ期待しております。信じてともに声援を送りたい虎党の皆さま、新橋でお待ちしております。

■川尻哲郎(かわじり・てつろう) 1969年1月5日、東京都生まれ。亜大から日産自動車を経て94年ドラフト4位で阪神入団。1年目から8勝、97年は開幕投手を務め、98年5月26日の中日戦(倉敷)でノーヒットノーランを達成。2003年オフに近鉄移籍、翌04年オフには球界再編による分配ドラフトで新球団の楽天に移籍し05年限りで現役引退。通算227試合登板60勝72敗3セーブ、防御率3.65。14年にはBCリーグ・群馬監督に就任してリーグ優勝。20年から東京・新橋で阪神戦を観ながら飲めるスポーツバー「TIGER STADIUM」を営む。

この記事の関連ニュース