Infoseek 楽天

ぴいぷる 作曲家、シンガー・ソングライター、井上ヨシマサ 駆け出しからヒットメーカーとして活躍 「自分が歌いたい歌を」貫き続けて40年

zakzak by夕刊フジ 2024年8月16日 11時0分

AKB楽曲も

今年、作曲家デビュー40周年を迎えた。駆け出しのころは、小泉今日子や中山美穂、光GENJIといったアイドルに楽曲を提供し、2000年代にはAKB48などでミリオンヒットを記録するなど、第一線を走り続けている。

「なんか周年って、自分の誕生日会にみんな来てねって言っているみたいでこっぱずかしかったんです。でも、さすがに40周年となると、長年支えてくれた方たちもいるし、応援してくれる人もいるので、感謝を伝えることも必要だなと思ったんですよね」

ということで、動き出したアニバーサリープロジェクトの第1弾が、デュエットアルバム「再会~Hello Again」(キング)だ。

作曲家への第一歩となった小泉今日子の「Someday」や、アニメ主題歌としてヒットした森川美穂の「ブルーウォーター」、郷ひろみの「バックステージ」などを、彼ら自身とデュエットしているのだ。まさに作曲家人生の集大成といえる。

「この企画は喫茶店での打ち合わせで始まった感じで…。昔の歌はこれまであまり触れてこなかったんですが、最近のライブで光GENJIの曲をやってみたところ、プロデューサーから周年でやってみてもいいんじゃないって言われて。僕も40周年に前向きになっていたのでレディーゴーな感じでした。ただ、デュエットを引き受けてもらえるかどうかが心配でしたね」

とはいえ、当たって砕けろとばかりに、まず中山美穂にアタックしたところ、意外や意外、すんなりとOKが出た。

「この調子でというわけではないですが、いろいろと声をかけたら、基本的には〝ヨシマサだったらやるわ〟という感じで引き受けていただいて。ありがたいですね。作曲家の周年アルバムということなので、大御所っぽくなるのは嫌だったので、アーティストとしてライブもやりつつ、作曲家もやってるみたいな感じで受け止めてもらえるものを目指しました」

1日3曲ザラ

デビュー直後からヒットメーカーとして活躍した。あるレコード会社に顔を出すと、「ヨシマサがまた5万枚稼ぎに来たぞ」なんて言われたほどの売れっ子だった。

「長者番付にも名前が出たりして。そのころは1日に3曲とか書いていて、マネジャーが曲を取りに来ると、あとちょっとなんで待っててとか言って作り始めて、3~4分でワンコーラスだけ作って渡すみたいな感じでした。だから一から十まで自分の責任をもってやった感がなかったんですよね」

次第に自分の音にこだわるようになっていくと、周囲との軋轢も生まれてくる。

「要は交渉が下手くそだったんですよ。若かったし。うまく言えれば、もっとよかったんだけど、現場では〝それいいですね〟ってやるんだけど、家に帰ったら〝やっぱりよくない〟とか思って。それが結構、積み重なり問題が大きくなって、結局、事務所から独立して。でも振り返ってみると、それってまだ5年目ぐらいのことなんですよ」

思えば小泉今日子に楽曲を提供したとき、プロデューサーから言われたのが、「自分が歌いたい歌を作れ」ということだった。この40年間、それを貫き続けている。それが作曲家としての矜持なのだ。

「僕のことを、作曲家としての最後の世代だって言う人もいるんです。僕がデビューしたころって、レコード会社に作曲家の先生がいて、アーティストのデビューとなったら作曲家選びから始まったから。今は自分で作って、自分で歌うアーティストがほとんどだけど、僕は自分で歌いたい歌を作るし、提供するアーティストのために作っていますよ」

柔軟さ心がけ

もともとはクラシックピアノからジャズピアニストを目指し、中学生のときにシンセサイザーユニット「コスミック・インベンション」のメンバーになった。そこでYMOと出会ったことも自身の音楽性を広げるきっかけとなった。

「考えてみたら、日本の音楽に根元にいた人たちに会う機会が多かったです。だからこそジャンルにこだわらず柔軟になれたし、40年もやってこれたんだと思います」

だが、40年は決してゴールではない。まだまだ探求の道は続く。

(ペン・福田哲士/カメラ・三尾郁恵)

40周年アニバーサリーアルバム第1弾「再会~Hello Again」発売中

■井上ヨシマサ(いのうえ・よしまさ) 作曲家、シンガー・ソングライター。1966年生まれ、58歳。東京生まれ。小学4年でビッグバンドに入団し、ジャズの基礎を学ぶ。79年、中学生で「コスミック・インベンション」のキーボード奏者としてプロに。85年、小泉今日子のアルバム楽曲「Someday」で作曲家デビュー。以降、作編曲を手掛けた歌手は浅香唯、上戸彩、荻野目洋子、おニャン子クラブ、CHEMISTRY、郷ひろみ、とんねるず、中山美穗、光GENJIなど。2007年以降、AKB48の初期から作曲を担当。「Beginner」「Everyday、カチューシャ」「真夏のSounds good!」「サステナブル」「恋 詰んじゃった」などAKBの作家陣で最も多くの曲を手掛ける。40周年プロジェクトでは「再会~Hello Again~」を含めて3枚のアルバム発売を予定している。

この記事の関連ニュース