USPGAツアーで8勝しているK・J・チョイが、シニアのメジャー大会である全英シニアオープンを制した。井戸木鴻樹の全米シニアプロ制覇に次ぐアジア選手として二人目のシニアメジャーチャンピオンとなった。
レギュラーツアーでの8勝は、松山英樹(通算9勝)に抜かれるまでアジア選手としての最多勝利だった。中学生まで重量挙げに取り組み、ゴルフを始めたのは高校に進学してから。ジャック・ニクラウスの本を読み、独学でゴルフを覚え、スイングを身につけていった。そのスイングは、ニクラウスの真似ではなく、基本となる動きを学んだ上で、いかに自分の体格に適した動きに仕立てていくかを重要視した独自のものになっていった。
体幹が強く、肩幅が広い。その特長がスイングを作らせていったのである。タテ振りのアップライトなスイングにするには腕が短いし、柔軟性にも欠ける。そこで、フラットめにして、スイング軸を揺らさず、たわまさないで、肩、腰をレベルにターンさせる方法にいきついた。さらに、リストコックを最小限にしてクラブヘッドに遊びを作らない。ヘッドスピードは、幅の広い肩の動きで上げていく。
歴代の全英オープンチャンピオンであるダレン・クラークも、実はK・J・チョイと同タイプのスイングをしている。
かつて尾崎将司がいったことがある。「自分の肉体的な特徴を知らないと自分のスイングは作り得ない」と。同様のことは、クラブ選びにもあてはまる。
リー・トレビノの至言「名手のスイングは偉大なる自己流」
「名手と呼ばれた選手たちのスイングは、みんな偉大なる自己流である」とは、変則的といわれたリー・トレビノが記者団に囲まれて独自のスイングについて問われたときに返したセリフだ。独学のススメであった。型にばかりこだわっていると、間違ったゴールに飛び込んでいってしまう危険性がある。トーナメント観戦の機会があれば、スイングばかり見るのではなく、弾道に注目して、それに近い弾道のショットが打てるように練習することも独学の道に通じるだろう。もちろん、その前に、自分の身体的特長を知ろうとする学習も忘れずに―。
■チェ・キョンジュ(K・J・チョイ) 1970年5月19日生まれ、韓国莞島郡出身。少年時代は重量挙げの選手で高校時代からゴルフを覚えた。1994年プロ転向。韓国、アジア、日本ツアーを経て、2000年から韓国人として初めて米ツアーに本格参戦し8勝。プレジデンツカップには選手として3大会に出場。24年「全英シニア」でシニアメジャー初優勝。170センチ、82キロ。