TBS金曜ドラマ「笑うマトリョーシカ」。このタイトルを聞くとミステリー好きは血が騒ぐ。
スウェーデンの警察小説「刑事マルティン・ベック」シリーズの中に「笑う警官」という秀作がある。ハリウッドがウォルター・マッソー主演で映画化。「マシンガン・パニック」というタイトルだった。
そのオマージュとして直木賞作家、佐々木譲が書いたのが「道警シリーズ」の中の一作。映画にもなり、「笑う警官」のタイトルで角川春樹がメガホンをとった。
「笑ゥせぇるすまん」という藤子不二雄Ⓐのテレビアニメもあった。「喪黒福造」が出てきたアレだ。
というわけで、「笑う~」というタイトルにひかれて見始めた「笑うマトリョーシカ」。日本推理作家協会賞や山本周五郎賞などの受賞歴を持つ作家、早見和真の同名小説が原作だ(ちなみに、この2つの賞は佐々木譲も受賞している)。
主演・水川あさみ、共演・玉山鉄二と櫻井翔。警察ものかと思ったら、ヒューマン政治サスペンスではないか。
印象的な〝笑顔〟とリベラルな言動で人気を集め、未来の総理候補との呼び声も高い若き政治家(櫻井)と、有能な秘書(玉山)。2人は高校時代に出会い、玉山は櫻井を生徒会長にした。今は、総理に導くことにすべてをささげている。
2人の関係に違和感を覚えた新聞記者(水川)が、彼らの隠された過去を探り、真実を追っていく…。
初回、水川が訪ねた櫻井の事務所で、ロシア民芸品のマトリョーシカに目をやる。
<あの人形、先生のお顔にそっくりですね。笑った顔が>
<そうですか>
そのやりとりは、以降の展開がマトリョーシカのような〝入れ子〟になるのではとも思わせる。櫻井の笑顔は〝偽りの仮面〟なのかと。
それと、玉山と櫻井の交友の始まりがさりげなく語られる。一緒に松本清張原作の映画「砂の器」を見ていた。原作者の早見が本作でオマージュをささげるのは「砂の器」なのか。だとすれば、最終回は絶対に見逃せない。 (新橋のネクタイ巻き)