衆議院選挙の結果を受けて、東京市場は方向感を見定める展開入りとなるでしょう。ただ、11月1日発表の10月米雇用統計、5日の米大統領選、7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)最終日という大きなイベントを米国で控える中、日米では注目企業の決算発表も相次ぎます。
こうしたなか、東証グロース250指数は、今年8月の水準まで急落しました。全般相場が不安定な中、新興銘柄を中心とする中小型株は厳しい展開となっています。3月期決算の中小型銘柄の業績発表は、11月中旬に向けて集中していることから、手掛けにくさが先行します。ここからは、決算発表を目先に控えていない好業績銘柄で、株高シナリオが描けるテーマ性を持つ銘柄が注目されます。株価1100円台の値頃感を持つ東証スタンダード上場の「ダイコー通産」(7673)はその有力候補です。
ダイコー通産は、ケーブルテレビや通信事業者、電力会社向けを主力とする通信機器の専門商社です。同社の直近事業では、大型データセンターの設備案件、医療福祉施設向け屋内通信設備案件や防災行政無線のデジタル化案件の受注を取り込んでいます。監視カメラも手掛け、物色テーマとなっているデータセンター、防災・防犯のテーマ性を持っていることが特徴です。また、過去には政府が推進しているGIGAスクール構想案件の特需を享受し、来年度以降にリプレース需要が発生してくる期待があります。同様に、政府が進めるデジタル田園都市国家構想では、光ファイバー・5G・データセンター、海底ケーブルなどのデジタル基盤の整備が前提となっており、同社のビジネスチャンスに直結しています。
会社側の今2025年5月期業績予想は、売上高190億円(前期比10・3%増)、営業利益9億8300万円(同11%増)、経常利益10億200万円(同11・8%増)、当期利益6億6000万円(同9・8%増)の増収増益で、4期ぶり増益転換見込みです。1株利益予想は123・95円(前期実績112・90円)。10月10日発表の第1四半期(6月から8月)は前年同期比72・8%営業増益、四半期最終利益は同89・3%増と高い伸びを示し、会社側が計画する第2四半期(6~11月)最終利益予想に対する進捗(しんちょく)率は60%に達する好スタートを切っています。
5月9日の年初来高値1498円後に調整に転じた株価は、全般相場の急落を受けて大きな下ヒゲを伸ばしてつけた8月5日の920円安値を除くと、昨年以降は1100円ラインが一つの下値到達ランとして形成されています。8月第3週(19日から23日)から前週まで、10週連続で1100円台を下値にもみ合っており、きっかけ次第で上放れに転じる期待が膨らんでいます。PER9倍台、PBR1倍割れの0・8倍台と株価指標的に割安感を抱え、年間配当50円見込みでの配当利回りは4%を超えており、先高観が意識される水準にある銘柄といえるでしょう。
■天野秀夫(あまの・ひでお) 日本大学法学部卒。1987年4月、日本証券新聞社に入社。記者、編集局長などを経て、代表取締役社長を12年近く務める。2017年4月、独立。証券・金融界、上場企業経営者とのパイプを生かし金融リテラシーへの貢献を目指す。