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「給料が減る」「休みがなくなる」ガソリン高騰にトラックドライバーの〝怒りと悲鳴〟政府の補助金縮小「今国会で先に議論すべき」

zakzak by夕刊フジ 2025年1月29日 15時0分

「ガソリン高騰」現場ルポ

ガソリンや軽油など、燃料価格の高騰が収まらない。石破茂政権は石油元売り各社への補助金を段階的に縮小しており、20日時点でレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル当たり185円10銭と、2023年9月の過去最高値(186円50銭)に迫った。ガソリン価格の高騰は郊外や地方のドライバーに痛手となるほか、運送費にもはね返る。長距離トラックのドライバーらが給油する軽油も事情は同じで、補助金の縮小で値上がりに見舞われている。「給料が減る」「休みがなくなる」…。怒りや悲鳴が上がる現場を取材した。 (報道部・丸山汎)

「毎回ガソリンスタンドの価格表示を見てゾッとしている。少しでも安いところをみつけて入れようと近所を何軒も回っている。電気代もガス代も高いのに、何とかならないのか」

横浜市在住の50代の男性会社員はそう口にした。多くの週末ドライバーたちも同じ思いではないだろうか。

ガソリンや軽油、灯油などの価格を抑制する政府の補助金は、原油価格の高騰を受けて2022年1月に始まり、支援額を縮小しながら延長を繰り返してきた。

石破政権でも補助金支給を継続する一方、昨年12月19日、今年1月16日と段階的に補助率を縮小した。ガソリン価格はこれに伴って185円台まで値上がりした。

プロの運転手たちの状況はもっとシビアだ。ディーゼルエンジンの大型トラックに使う軽油の全国平均価格も昨年12月中頃まで155円台だったのが、今月20日時点で164円70銭まで上昇した。

運送会社も多い東京都内の幹線道路の路肩には大型トラックがずらりと並ぶ。「青森」「大阪」などのナンバープレートも長旅をしのばせる。休息中の運転手らが現在の苦境を語ってくれた。

「政府の補助金が減らされ始めてから、会社側も人件費を削り始めた。自分はまだ若手で長距離を走れるからいいけれど、体力的にきつくなっている年配の先輩たちは時給に換算すると100円単位で減っていると思う」

都内の運送会社で働く35歳独身という男性運転手は運転席からそうポツポツと答えた。

「年末には会社から『大みそかまでに満タンにしておくように』と指示があったよ」と明かしたのは、北九州―東京間を12トントラックで往復している男性(59)だ。

「重い荷物を長距離運ぶ〝きつい〟仕事は単価も高いからいいけれど、近場でコンビニ弁当を運ぶなどの仕事を請け負う中小企業などでは、経費の厳しさが続けば倒れるところもあるんじゃないか」

北海道から10トントラックで来たという男性(55)は「油を使わないようにスピード控えめで走るようになったから、函館―東京を3日で往復していたのが、いまは4日かかる。月の休みも減って今月は1回しか家に帰ってない。これだけ軽油でも税金払ってるんだから、少しは俺たちにも還元してほしいよ」と不満をもらした。

都内のガソリンスタンドで働く社員は変化を実感しているという。

「都心のスタンドでは、個人タクシーでも満タンの注文が減り、『10リットル』とか『2000円分』で給油される方が増えました。『高い!』と舌打ちしてバイト君をにらみながら帰るお客さんもいます。値上がりしてもうちの利益は全然増えてないんですが」とため息交じりで告白した。

海外の交通事情にも詳しい自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は「かつて『ガソリンは水よりも安い』といわれた米国でも、2年前にはカリフォルニア州で、日本円でリッター200円台半ばまで上がった。いまも180円台と、日本とそこまで変わらない。でも、平均年収が高く、ガソリンの値上がり分も職場が補助することも多い。英国やオーストラリアのガソリンの値上げ幅も相当だが、賃金が上がらない日本の環境とは全然違う」と話す。

自民党、公明党、国民民主党は昨年末、ガソリン税に25・1円を上乗せしている「暫定税率」の廃止で合意したが、減税の結論は先送りされた。

経済ジャーナリストの荻原博子氏は「現在の日本のガソリン代のひどさは政治的理由が原因だ。暫定税率は50年間も『暫定』のままで、ガソリン代は消費税との二重課税などで4割が税金だ。過去最高の税収が続いているのだから、『夫婦別姓』の議論もいいけれど、今国会では先にガソリン代などを議論すべきだ。石破政権は国民の暮らしを考えているのか」と強調した。

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