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ニュース裏表 峯村健司 中国で相次ぐ無差別襲撃事件 〝天網システム〟「デジタル監視社会」が裏目に 「信用スコアシステム」浮かび上がる傾向

zakzak by夕刊フジ 2024年11月23日 10時0分

中国各地で無差別襲撃事件が連日のように起きている。繁華街に自動車が突っ込んだり、学校内で学生らが刃物で切り付けられたりするなど、突発的で残忍な犯行ばかりだ。何よりも狙われているのは、容疑者とは関係のない「無辜(むこ)の市民」たちだ。

中国国内には、人工知能(AI)を使った顔認証システムが搭載された監視カメラが、約2億台設けられているといわれる。「天網システム」と呼ばれ、中国全土で特定の人物を1秒余りで見つけ出すことができる。

さらに、中国では2000年代から国民の信用情報を管理する「社会信用システム」の実験、導入を進めてきた。契約を守らなかったり、多額の借金をしたりするなど、問題行動を起こす企業や個人のブラックリストを作成し、公表してきた。

市民に同じ得点を与え、交通違反や借金の踏み倒し、道路の落書きなどの行為をすると、減点していく「信用スコアシステム」を採用している自治体も増えている。点数が低いと、飛行機に乗れなかったり国外に出られなかったりすることがある。

こうした取り組みは、民間企業でも進んでおり、IT大手アリババグループの「芝麻信用」が最も普及している。個人の支払い履歴のほか、交友関係や学歴などのデータをAIで分析して、350から900点の点数を算出している。

習近平政権は14億人の国民を効率的に追跡、監視できるシステムを確立した。これによって「世界で最も安全な社会」を実現できたはずの中国で、なぜこれほどの事件が頻発しているのだろうか。

この「デジタル監視社会」こそが、襲撃事件の一因と筆者はみている。

最近の事件を分析すると、いくつかの傾向が浮かび上がる。容疑者は単独で、突発的に犯行を起こしている。いくら「天網システム」で監視をしても、突然、車で突っ込んだり刃物で切り付けたりしたら、犯行を未然に防ぐのは難しい。

次に容疑者の属性を分析してみる。30~50代の地方出身の男性が多いことが分かる。これまで都市部に出稼ぎをして生計を立てていたが、新型コロナ後も続く景気悪化でなかなか職がみつからなかったことがうかがえる。こうした人々は「信用スコア」が低い傾向があり、就職や結婚などが難しいケースが少なくない。将来を悲観して自暴自棄となり、犯行に及んでいるのだ。

SNS上の事件に関する書き込みについて、中国当局は削除をしているが、いたちごっこが続いており、今後模倣犯が増える可能性が高い。

習政権は事件を防ごうと、監視や取り締まりの強化を地方政府に指示しているが、かえって逆効果になりかねない。国民の不満を緩和するような経済や失業対策といった抜本的な解決に取り組みが急務である。 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究員・峯村健司)

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