Infoseek 楽天

森永康平の経済闘論 円相場、次の焦点は米大統領選 データと要人発言に振り回される展開 石破首相コメント、日本国内にも要因

zakzak by夕刊フジ 2024年10月10日 11時0分

米労働省が発表した9月の雇用統計は非常に強い結果となった。非農業部門の雇用者数は前月比25万4000人増と事前予想の同14万7000人増を大幅に上回り、過去6カ月で最大の伸びを記録した。また、失業率も前月の4・2%から0・1%改善し、4・1%となっており、2カ月連続で改善をしている。

これまで米国では高止まりするインフレ率を抑えることが課題となっていたが、インフレ率が徐々に鈍化する一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を考える際に重視する点は減速傾向が見られる労働市場に移行していった。そして、FRBは18日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で2020年3月以来、4年半ぶりとなる利下げを決定した。

もともと9月から利下げ局面に入ると多くの市場参加者が予想をしていたが、その利下げ幅が通常の0・25%ではなく倍の0・5%であったこともあり、市場では今後1年間でそれなりに速いペースで利下げすることを織り込む動きも観測されたが、パウエル議長は「今後の利下げペースはデータ次第だ」と牽制(けんせい)をした。

その発言を念頭に今回の強い雇用統計の結果を見れば、11月、12月はそれぞれ通常の0・25%という引き下げ幅になるだろう。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の「FedWatchツール」を見てみると、既に11月はほぼ100%の市場参加者が0・25%の利下げを予想しており、0・5%の予想はほぼ皆無だ。雇用統計が出るまでは米国の労働市場は総じて軟調になっているという評価だっただけに、1回の結果でここまで評価が変わる状況は、かえって米国経済が断定的な評価を下しにくい状況にあることを表しているともいえよう。

雇用統計の結果を受けて、為替市場では円売り・ドル買いが加速し、一時1ドル=149円台まで円安が進行した。しかし、これは雇用統計の結果だけではなく日本国内にも要因があるだろう。それは、自民党総裁選で勝利した石破茂首相のコメントだ。

もともと石破首相はアベノミクスに批判的とされ、金融政策の正常化、つまり利上げに肯定的であるとされていたが、2日夜に日銀の植田総裁と会談した後に「個人的には追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と発言をした。

来月には米大統領選もあり、今後もしばらくはデータや要人の発言に振り回される展開が続くだろう。

■森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。

この記事の関連ニュース