衆院選で与党の自民党と公明党が大きく議席を減らした。選挙後に景気やインフレ率、雇用の動きはどうなるだろうか。
経済の前に政局がある。衆院選の日から30日以内に特別国会が召集される。そこで内閣は総辞職し、首相指名選挙を行うという流れだ。
戦後最短の政権は、東久邇宮稔彦王内閣で、1945年8月17日から10月9日の54日だ。今回、特別国会での首相指名の前に、自民党の両院議員総会で総裁が交代すれば、石破茂政権は戦後最短内閣になるかもしれない。
石破首相は自民党総裁選では「解散は急がない」と言いつつ、戦後最短の日程で衆院選を強行した。しかも処分済みの政治資金収支報告書不記載問題を蒸し返した。さらに首相本人の主張がブレるなど、衆院選で負けた責任は否定できない。
もし石破首相が居座れば、麻生派や旧茂木派から閣僚の引き揚げが起こり、政権を維持するのが困難になることも考えられる。
首相の座に居座りつつ、保守系政党を取り込んで、連立を組み替えるという手法もあり得る。だが、政策の違いが大きすぎることもあって、どの政党も泥舟には乗らないだろう。
そうした意味ではただ一つ、財務省が裏で主導する形での立憲民主党との大連立は、少ない可能性ながらあり得るのではないか。というのは、石破政権と野田佳彦代表の立憲民主党はともに左派であり、マクロ経済政策では緊縮財政、金融引き締めなど結構似ているからだ。
そうなると、日本経済の先行きには期待できない。景気は悪くなり、デフレに逆戻りする恐れもある。雇用もさえず名目賃金も上がらない。実質賃金も低迷するだろう。
一方、石破首相が居座れない場合、前述したように、自民党の両院議員総会で新総裁を選出することになるだろう。9月の総裁選で石破氏の勝利に貢献した岸田文雄前首相の連帯責任も問われるだろうから、本命は高市早苗前経済安保相となる。
この場合、少数与党となり政権運営は困難を極めることも考えられるが、多数与党とするために、あらゆる手が尽くされるだろう。
政策的には、別の保守系政党と似ているところもある。連立とまではいかないとしても、政策や法案ごとの部分連立はあり得るかもしれない。
この場合、マクロ経済政策では、積極財政、金融緩和という共通点もあるので、景気の見通しも良く、日本経済には朗報になる。デフレから完全脱却し、雇用も安定し、名目賃金も上がる。少し遅れて実質賃金も上がり出すだろう。
本コラムで指摘したように、アベノミクスを内心否定しつつ表では別のことを言ったり、「最低賃金1500円」を2020年代に実現すると平気で言い出す石破政権では経済は良くならない。まして、政策が似ている野田立民との大連立でもダメだ。本格的に日本経済を再生するためには、高市氏を中心とした保守系政権が必要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)