昨年、話題を集めた配信ドラマ「極悪女王」(Netflix)は、1980年代にクラッシュギャルズ(ライオネス飛鳥、長与千種)に対抗するヒールレスラーとして女子プロレスブームの一翼を担ったダンプ松本を描いた作品だ。
そのダンプが1985年に出演したCMが、日清食品の「タコヤキラーメン」だった。当時、さまざまな変わり種カップ麺が生まれたが、これもそのひとつ。タコヤキがラーメンに乗っているという不思議な一品で、ダンプはラーメンをすすり、ひと言「マジだぜ」と放つ。インパクト大のCMだった。
ダンプといえば、「夕やけニャンニャン」(フジテレビ系)での、MCの片岡鶴太郎との抗争も思い出深い。「バーカ」などと罵声を浴びせる鶴太郎に、竹刀を振り回して襲い掛かるというお約束の展開だったが、番組に花を添えた。
80年代は面白CMが多く生まれたが、金鳥(大日本除虫菊)の一連のCMは特に人気を集めた。
85年には、ミスター・タイガースの掛布雅之と西川のりお、たこ八郎が「イングリモングリ、イングリモングリ、ええ気持ち」と意味不明の言葉を繰り返す「キンチョーマット」や、花やフリルがあしらわれたビキニ姿の木野花ともたいまさこが軽トラの荷台に乗って「今日も一日、ご苦労さまでした」と商品名を繰り返す「タンスにゴン」など、シュールすぎる世界観がおなじみだった。これらのキャッチフレーズが小学生の間でもしっかり流行したことは言うまでもない。
公共広告機構(現ACジャパン)で、当時近鉄バファローズの投手だった鈴木啓示の「投げたらアカン」という青少年の非行防止のCMもこの年。お堅い内容のCMながら、このフレーズはさまざまなパロディーに使われたものだ。
「いやはや、鳥人だ」は「アリナミンA25」(武田製薬)のCMのキャッチフレーズ。名高達郎が、3メートルの高さにつられたボールを飛び上がってけり上げるインドの達人に挑んでいる。「鍛えれば全身バネになる」というマサイ族の垂直ジャンプに始まり、名高がさまざまな世界の達人に挑戦する一連のCMも印象深い。このころから、再びサラリーマンにハッスルを促すCMが現れ始め、時代はバブルへと向かっていく。
■ダンプ松本 女子プロレスラー。1960年11月11日生まれ、64歳。埼玉県出身。80年、全日本女子プロレスでレスラーデビュー。84年にダンプ松本に改名。クレーン・ユウらとヒール軍団「極悪同盟」を結成。クラッシュギャルズの抗争を繰り広げた。