中東情勢が一触即発の危機を迎えている。イランのマスウード・ペゼシュキアン大統領が5日、イスラエルに対して、イスラム原理主義組織ハマスの最高指導者、イスマイル・ハニヤ氏殺害の報復を改めて宣言したのだ。ジョー・バイデン米政権は中東各国にイランへの自制を呼びかけるよう外交努力を続けるが、同日にはイラクの米軍拠点が攻撃される事態も発生した。イランと親イラン民兵組織ヒズボラが一両日中に、報復に出るとの観測も出ている。
「(ハニヤ氏殺害は)明らかな国際法違反だ」
「犯罪への報いは確実に受ける」
ペゼシュキアン氏は5日、ロシアのセルゲイ・ショイグ安全保障会議書記(前国防相)との会談でこう語った。
アントニー・ブリンケン米国務長官は5日、カタール、エジプトの外相との電話会談で、イランに自制を呼びかけるよう求めた。
米ニュースサイト「アクシオス」によると、ブリンケン氏は4日、G7(先進7カ国)の外相らとの電話協議で、イランとヒズボラによるイスラエルへの攻撃が早ければ「24~48時間以内」に始まる可能性があると語った。
一方、アラブ諸国の理解と支持を求めるため、イランがイスラム協力機構(OIC)の会合開催を要請し、OICが7日に緊急外相級会合を開くため、攻撃開始がずれ込むとの見方も出てきた。
こうしたなか、ロイター通信は5日、米軍の拠点があるイラクのアサド基地にロケット弾による攻撃があり、少なくとも米兵5人が負傷したと報じた。イランなどによる報復との関係は不明という。
日本の原油への影響は
現在の情勢をどうみるか。
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「アサド基地への攻撃は、イラン革命防衛隊の対外工作を担う『コッズ部隊』に関係するイラクのシーア派民兵によるものと考えられる。イラン側の許可なしに民兵は勝手な動きはできず、米国を牽制(けんせい)する狙いで指令を出したのではないか。報復の程度はイラン本国の判断次第だが、今回はメディアや著名人が好戦的だ。『ペルシャ湾の米軍を攻撃しろ』という意見も出ており、今後が懸念される。ペルシャ湾が混乱すれば、日本への原油輸入ルートにも影響するだろう」と語った。