Infoseek 楽天

日本名優列伝 中尾彬という俳優 池波志乃「中尾に一度も怒られたことはない」食卓に和食と洋食…夫婦仲むつまじいエピソード 「龍三と七人の子分たち」(2015年)

zakzak by夕刊フジ 2024年7月28日 10時0分

中尾彬は、江守徹とはケンカ仲間だった。彼の周りにはいつも多くの仲間がいた。仲間に恵まれたのもひとえにその人柄によるのだろう。

ともあれ時代を経て、重厚な役が増えていったのは当然のなりゆきだが、「ヒロイン失格」(2015年)や大ヒットした「翔んで埼玉」(19年)といった軽やかな作品にも出演していたのが印象に残る。

そして、この「龍三と七人の子分たち」(15年)もヤクザが主人公だが、そんなことがあるわけないだろうという、正義感の強いロートルたちが奮闘するブラックコメディーで高齢者へのエールになっている。

この作品は北野武の17作目の監督作品。「アウトレイジ ビヨンド」(12年)から3年ぶりのメガホンとなった。

一龍会のメンバーを紹介しよう。元ヤクザの組長連中が集まったという設定だけにこわもてすぎる。龍三役の藤竜也を筆頭に、若頭のマサ(近藤正臣)、早撃ちのマック(品川徹)、ステッキのイチゾウ(樋浦勉)、五寸釘のヒデ(伊藤幸純)、カミソリのタカ(吉澤健)、神風のヤス(小野寺昭)。中尾ははばかりのモキチ役で寸借詐欺師だ。いつもヤクザ役のビートたけしはマル暴の村上刑事というから笑える。

ちなみに龍三が女のマンションからネグリジェで逃げ出すシーンは、監督の実体験らしい。これで興行収入16億円をたたき出したというから恐れいる。

北野武監督「いい役者がいなくなった。ショックです」

監督は「アウトレイジ ビヨンド」でも、中尾に無残に殺されるヤクザの幹部役を演じさせているが、中尾の死後、「またひとり、いい役者がいなくなった。ショックです」とコメントしている。

それにしても池波志乃との芸能界きってのオシドリ夫婦ぶりを明かすエピソードは事欠かない。食事は、池波が和食と洋食をそれぞれ作り、中尾が和食に手を付けたら自分は残った洋食を食べたそうだ。

池波は、中尾に一度も怒られたことはないとあるインタビューで語っていたが本当だろう。 =おわり (望月苑巳)

■中尾彬(なかお・あきら) 俳優。1942年8月11日~2024年5月16日。81歳没。千葉県出身。61年に武蔵野美術大学油絵学科へ入学。同年に日活ニューフェース第5期に合格。翌年に日活を退社、大学を中退してフランスへ留学する。63年に帰国して劇団民藝に研究生で入団。71年に民藝を離れ、各映画会社やテレビドラマで活動を始める。妻は女優の池波志乃。

この記事の関連ニュース