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日本の解き方 トランプ氏とEVと化石燃料 民主党の環境政策の逆をいく分かりやすさ 米国のエネルギー供給国化は日本にとってメリットが多い

zakzak by夕刊フジ 2024年7月30日 11時0分

米共和党のドナルド・トランプ前大統領は、「電気自動車(EV)普及の義務を(大統領就任)初日に終了する」と述べ、民主党のバイデン政権の重要政策を撤回する考えを示した。

自動車を巡る規制は、各国の覇権争いなので、しばしば方針が変わりうる。欧州連合(EU)が「2035年にエンジン車の新車販売を禁止する」という方針を撤回したのも記憶に新しい。

かつてドイツは、日本のハイブリッド車に対抗して、「ディーゼル車が環境にいい」と、笑い話のようなことを言っていたときもある。それが、EV化でエンジン車禁止路線になったと思ったら、今度は合成燃料を使うエンジン車を例外とするというご都合主義だ。

そもそもEV化が本当に環境にやさしいかどうかも定かでない。というのは、発電の4分の3は石炭、液化天然ガス(LNG)、原油などの化石燃料で行われているので、これが変わらなければ電気を作る過程で二酸化炭素(CO2)がかなり発生するのだ。CO2を発生させる電気で走るEVと、カーボンニュートラルの合成燃料によってCO2の排出を抑えたエンジン車では、社会全体としてどちらが環境にやさしいか、そう簡単に答えが出る話ではない。

ともあれ、環境にかこつけて、自動車メーカーは世界覇権を争うわけで、それが欧米での自動車規制となってくる。これが国際政治の真実である。

その点、トランプ氏は分かりやすい。民主党が環境政策指向なので、その逆だ。トランプ政権になれば、気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」の再離脱は確実だ。

トランプ氏の公約のなかで、「ドリル、ベイビー、ドリル」というのがある。米国内の化石燃料を掘りまくれという分かりやすいものだ。実現すれば米国は最大のエネルギー供給国になる。エネルギー価格も下がり、安定するだろう。

いずれにしても、国際政治としては脱炭素化の完全否定までには至らない可能性があり、日本は欧米からのいろいろな「変化球」に対応する必要がある。その意味で、「EV一本足」も「EV完全拒否」も正しくなく、状況に応じた柔軟な対応が必要だ。

EVは超長期的に見れば普及するだろう。電気は扱いやすいエネルギーなので、各種の製品で進む「電化」は自動車でも不可避だと思う。石油ストーブがエアコンに置き換わったのと同じようなものだ。各家庭で充電できるというのはガソリン車にないEVのメリットだ。

ただし、EV化は一直線ではない。仮に世界でEV化路線が継続するとしても、基本となる電力をいかに安く生産できるかを考えないと、日本全体で基盤となる国内需要が出てこないので国力を損なう。

米国がエネルギー供給国になって価格が安定することは日本にとって好都合だ。そこで環境を考慮した「小型モジュール式原子炉」でしのぎながら、30年代以降の「核融合」時代につなげていくことが望ましい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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