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実録・人間劇場 アジア回遊編~モンゴル(8)私の尻を物欲しそうになでてきた父親 トゥバ族集落で悪夢の展開 近くに母親と息子も…正気ではない

zakzak by夕刊フジ 2024年11月22日 15時30分

カザフ人のドライバー、ムシンを雇い、モンゴル西部の町、ウルギーから車で約8時間をかけ、私はアルタイ山脈の奥地に住む少数民族トゥバ族の集落へやってきた。

季節は5月。家畜を育てながら暮らしている3人家族(父、母、息子)の小屋に泊めてもらうことになっていた。小屋には野戦病院にあるようなベッドが4台ある。私は余ったベッドを使い、ムシンは自分の車で眠るという。

家族はモンゴル語ではなくトゥバ語で会話をしていた。私はモンゴル語も話せなければ、当然、トゥバ語も一切わからない。そのため、彼らの会話に加わることはできなかった。そんな私に父親は時々笑いかけ、気を使ってくれていた。

「どうだ、うまいか?」

羊の頭の丸焼きを食べていると父親がニコニコ笑いながら話しかけてくれる。これくらいの会話であれば、何となく言っていることがわかるのだ。食事が終わると父親は馬にまたがり、指笛を吹きながら、さっそうとアルタイ山脈の高原をかけていった。まるで「ゼルダの伝説」みたいだ。こんな男に私もなってみたい。

夕食後、母と息子がダウンとニット帽を装備し、小屋を出ていった。外はかなり冷えるが、羊と山羊を畜舎に収容しなければならないのだ。私はベッドに横になり、外でほえる犬の鳴き声を聞いていた。犬が家畜を畜舎に追い込んでいるのだろう。

すると、父親がおもむろに私のベッドの端に腰をかけた。そして、毛布の上から私の太ももにそのゴツゴツとした掌を乗せてきた。

「ユー、スリー、OK?」

父親はかろうじて知っている英語で私に「3」という数字を伝えている。日本の常識ならこの時点ですでに「おや?」と思うが、相手はトゥバ人である。私は彼らの文化をまだ何も知らないだけかもしれない。

「ユー、シックス、OK?」

父親の掌は私の太ももをガッシリとつかんでいる。「じん…」と熱まで感じる。鼻息も荒い。父親は私に欲情しているのだ。しかし、すぐ近くには母親と息子がいる。このトゥバ人、正気ではない。

「ユー、ナイン、OK?」

私が父親の手を振り払うと、数字は「9」まで上がった。おそらく、9万トゥグルグ(約4200円)で援助交際を申し出ているのだ。少数民族としてはかなりの破格だが、数千円で体を許すわけにはいかない。私の尻を物欲しそうになでている手をピシャリとたたくと、ついに父親は力任せに私に覆いかぶさってきた。想像以上にすごい力だ。そして、右手で私の肩を押さえつけ、左手で股間をまさぐり、首筋にむしゃぶりついてきたのである。

私も力で抵抗し、腹を蹴り飛ばすなどして難を逃れたが、仮に女性だったら簡単に襲われてしまったはずだ。そして、こんな山奥まで警察がくるとも思えない。

■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。

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