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須崎優衣、涙の「銅」のワケ レスリング女子〝元女王〟の重圧と苦悩「チャンピオンじゃないなら…価値がないんじゃないか」

zakzak by夕刊フジ 2024年8月8日 13時20分

女子フリースタイル50キロ級3位決定戦

【パリ(フランス)7日(日本時間8日)=山戸英州】マット上で茫然自失となった前日の初戦負けから一転。3位決定戦に臨んだ須崎は持ち味の強気で攻めるスタイルを取り戻し、オクサナ・リバチ(ウクライナ)を圧倒した。10―0のテクニカルスペリオリティー勝ちに、悔しさとうれしさの入り交じった涙があふれた。会場から去るまで何度も手を合わせてお詫びのポーズを取り、「最低限のことはできたかな」と振り返った。

初出場で頂点まで上り詰めた東京五輪から3年。無敗記録を伸ばしながらも、女王の苦悩は深まる一方だった。「結果だけ見ていたら順風満帆に来ているかというふうに思うんですけど、全然そうじゃなくて、けががあったりとかいろいろ苦しいことを乗り越えての3年間だった。想像以上に苦しい3年間だったなと思います」

大会前に4連覇を公言しながら、2連覇を懸けた初戦で夢を絶たれた。金星を献上したビネシュが決勝まで進み銅メダルの望みは残ったが、「五輪チャンピオンの須崎優衣じゃなかったら、もう価値がないんじゃないか」と失意は自我が崩壊するほどに深かった。再起する意味を教えてくれたのは、王座から転げ落ちた自分を変わらず支えてくれた声。「人として応援してくれる方が多く幸せ。負けても信じてくれた人をまた喜ばそうと思った」

ビネシュが決勝を前に体重超過で失格となり、敗者復活戦のカードがそのまま3位決定戦となる意外な展開。試合直前には、男子グレコローマンスタイル77キロ級で金メダルを取って練習場に戻ってきた日下からも「先輩、絶対に勝ってください!」と激励を受け、闘志に火が着いた。

「世界中のファンが背中を押してくれた」

3年間の重圧と苦悩から解き放たれたようにポイントを重ね、完勝後には出場した他国の選手にサインを求められるなど〝元女王〟の威光は揺るがず。会見でも海外メディアから質問が殺到し、「世界中のファンが私の背中を押してくれてチャンスをモノにできた。心から感謝しています」と静かに頭を下げた。

「4年後のロサンゼルス五輪、8年後のブリスベン五輪では必ず金メダルを取り、今回のメダルがあってよかったと思えるように頑張る」。自分を追い詰めるような、これまでの連覇宣言とは違う。新たな強さが、晴れやかな表情にみなぎっていた。

▽女子フリースタイル50キロ級3位決定戦

須崎優衣 (キッツ) Tスペ リオリ ティー 3分17秒 オクサナ・リバチ (ウクライナ)

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