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マネー秘宝館 「闇バイト」に巻き込まれる若者たち 小さな失敗を早めに経験することの大切さ 仕事も「先回りして指導」はNG、部下は育たない

zakzak by夕刊フジ 2024年11月13日 15時30分

全国各地で強盗犯罪が続いています。いつの間にやら物騒な国になったものです。しかも見知らぬ者同士が集まっているというじゃありませんか。

その昔、強盗といえば、単独犯か関係の近い仲間で行うものでした。ちなみに映画ゴッドファーザーなどに描かれるイタリア・マフィアは自らの組織を「ファミリー」と称していました。実際の家族はもちろん、他人であっても「家族」の一員、そこには血の結束があり、裏切りは許されないわけです。

そのような犯罪マフィアがいまやリモート化、プロジェクト化されてしまい、構成員の募集はネットを通じた「闇バイト募集」として行われています。そこにまんまと引っかかってしまう高校生や大学生たち。犯罪に手を染めてしまう彼らが悪いのはもちろんですが、彼らを引きずり込む手口の狡猾さには怒りを覚えます。そして自分の年齢的に、犯罪に巻き込まれた者たちの「親御さん」に同情を禁じ得ません。ある日突然、「自分の息子が犯罪者」という連絡を受ける気持ちは察するにあまりあります。本当にお気の毒。

私の推測を含みますが、事件に巻きこまれている若い人たちは「根っからの悪人」ではないように思うのです。金に困ってバイトを探しているうち、ついワナにはまって犯罪に落ちてしまう。「これはまずい」と気が付いたときにはもう手遅れ。あとには引き返せないところまで行ってしまう。繰り返しになりますが、だからこそ首謀者には腹が立つわけです。

犯罪は論外ですが、人間関係のトラブル、仕事上のミス、すべての「失敗」を避けて通ることはできません。だとすれば逆説的ですが、「早めに失敗しておく」ことが大切なのかもしれません。

10年ほど前から、「小学生、中学生にスマホを待たせるべきか」という議論が熱く交わされています。いまや中学生はほとんど持っていますが、小学生については「何年生から持たせるべきか」は相変わらず議論が続いています。この議論の根本には「スマホを持つと便利な半面、犯罪に巻き込まれる可能性が高くなる」という親の心配があります。

早めに持たせればコミュニケーションや情報入手に便利だが、悪い人たちとのかかわりや犯罪が心配。スマホを持たせなければ犯罪の心配はないが、友だちから取り残されるかもしれない…と、こんなメリット、デメリットが比較検討されるわけです。

さまざまな意見があろうと思いますが、人間関係に金銭トラブル、あえてスマホを持たせて「小さな失敗を経験させる」方が大きな失敗を避けられるように思います。ただし、重要なのは「その小さな失敗」を親に相談できる関係だけはしっかりつくっておくこと。

仕事でもそうですが「失敗しないように先回りして指導する」上司のもとで部下は育ちません。ある程度本人の自由にやらせる。しかし「まずいな」という失敗については早めに上司に相談できる関係をつくっておく。これが大切ではないかと思っております。

■田中靖浩(たなか・やすひろ) 公認会計士、作家。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経て独立開業。会計・経営・歴史分野の執筆・講師、経営コンサルティングなど堅めの仕事から、落語家・講談師との共演、絵本・児童書を手掛けるなど幅広くポップに活躍中。「会計の世界史」(日本経済新聞出版社)などヒット作多数。

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