今週からは、有名企業の就職に強い大学について、業種ごとに紹介していく。初回は、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、三井物産、三菱商事の合計就職者数を集計した、「5大商社に強い大学ランク」をお届けする。
大学通信は毎年、医学部と歯学部の単科大学を除くすべての大学を対象に就職状況調査をしている。2024年は560大学(74・0%)から回答が寄せられ、その集計値でランキングを作成した。
大学生の就活において商社の人気は高い。企業の採用活動を支援するワークス・ジャパンが26年卒の大学生を対象に行った「人気企業ランキング」の中間発表によると、文系学生の1位が伊藤忠商事で2位が三菱商事。さらに、三井物産(9位)と住友商事(15位)、丸紅(18位)がトップ20位にランクインしている。
人気業種である商社のハードルは高く、1人でも就職者があった大学は47大学で、回答があった大学の6・2%。そのうち5大商社すべてに就職者がいたのは、ベスト10に入った大学に、11位の筑波大と12位の北海道大、15位の東京外国語大と名古屋大を加えた14大学だった。
大学別のランキングの1位慶應義塾大、2位早稲田大、3位東大は不動のベスト3であり、4位の京大以下を大きく引き離す。5大商社の就職者判明数572人中、3大学で288人と半数以上を占めている。
3大学の中でも特に商社に強いのは慶大で、前年より3人減少したが120人台をキープ。企業別の就職者数は、三井物産33人、伊藤忠商事28人、三菱商事22人、住友商事21人、丸紅18人。
早大の企業別の就職者数は、三菱商事26人、伊藤忠商事24人、三井物産20人、丸紅15人、住友商事11人。合計数は前年を17人上回り、慶大との就職者数の差は、46人から26人に縮まった。ワークス・ジャパン代表の清水信一郎氏は言う。
「早大は三菱商事の就職者数で慶大を上回りました。商社の就職者増の背景には、すべての授業を英語で行う国際教養学部を持つなど、早大のグローバル人材養成に対する認知が進んだことがあると思います」
3位東大の内訳は、三井物産と三菱商事が各21人、伊藤忠商事と住友商事が各10人、丸紅が8人となっている。
京大以下は、大阪大(5位)、一橋大(6位)、神戸大(7位)、東京工業大(8位)、九州大(9位)と国立大が大半を占める。国立大優位な理由について前出の清水氏は、こう話す。
「商社はエネルギーや資源関連を扱う業務が増えてきています。国立大はこれらを研究する学部・学科が充実しているため、採用者が多いのでしょう」
私立大で早慶以外にベスト10に入ったのは、9位の上智大のみ。前述の5大商社すべてに就職者がいた私立大の一つで、商社に強い大学だ。語学力が高い学生が多く伝統的に商社に強いことから、卒業生が引っ張り上げてくれることが一因となっているようだ。
■井沢秀(いざわ・しげる) 大学通信情報調査・編集部部長。1964年2月6日、神奈川県生まれ。明治大学卒業後、受験情報・分析を主力事業とする大学通信入社。大学の入り口(入試)から出口(就職)まで、情報を収集し発信中。中高・大学受験の案内書・情報誌を編集するほか、新聞社系週刊誌、経済誌などへの情報提供と記事執筆を行う。