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ぴいぷる 歌手・俳優、舟木一夫 年間50ステージ、傘寿の誕生日もオンステージ「少しでも長く現場にいることが大事」 歌いたい、昭和の匂い

zakzak by夕刊フジ 2024年11月6日 6時30分

声を使い切る

今年12月12日に80歳になる。年間約50ステージをこなし、傘寿の誕生日も、バリバリの現役歌手として大阪・新歌舞伎座のステージに立つ。

1963年6月5日のデビュー以来、流行歌手兼役者として60年以上歌い、演じ続けてきた。2年後には芸能生活65周年を迎える。

「ここ3年ぐらいで会場の空気が急激に変わってきました。お客さまが僕の歌を聴きに来ていただけるタイムリミットと僕自身の年も考えあわせたとき、もう向こう10年はあり得ないわけだから、今、両者の思いがひとつになっています」

会場はどこも満員御礼状態で、声の調子も絶好調。「3年ぐらい前に最終的な発声法に変えたんです。今は地声を全部使って歌っています」

若い頃は本人の地声が出来上がっていないことが多い。歌手になったらブルースを歌いたいと思っていたが、ブルースでデビューしていたら今の舟木一夫はない。逆に今ならブルースで舟木一夫が成り立つわけだ。

「お客さまにどのように聞こえているという〝寸法〟をこっちが同時につかめるかなんです。それをつかんだら、自分の声を誘導していい。60歳過ぎぐらいにピントが合ってきて、寸法が分かってきたのが5年ほど前。そして最終的な発声に変えたのが3年前です」

その回その回でその日の声を使い切ることを今一番大事にしている。明日を考えてセーブはしない。1週間続けても問題ないというプロとしての自信があるからだ。

美しい立ち姿

最近、母親とともに初めて舟木のコンサートに来た女性が「歌っているときの〝立ち姿〟が美しい」と感動していた話を伝えると、「立ち姿は意識しています。ステージだけじゃなく普段から。ショッピングに行くときも意識している。Tシャツの後ろを引っ張るだけで姿勢が直る。もう身にしみついちゃっているから」

意識しているといえば、コンサートでは「1年間に一度として同じものを着て楽屋入りしていません。だからTシャツを仕事場へ着ていくと、それだけで50枚あることになります。プロである以上、その辺りはきちっとしませんとね」。

舟木は最近、「ラフ&フリー」という言葉を好んで使う。気持ちは「ラフにフリーに」歩きたいということだ。「多少、お客さまの望む舟木一夫の姿とずれる部分があったとしても、それは本人のメンタルを先に考えたいんですね」と言う。

来年も50ステージはこなす予定だ。「やってないとダメですね。さびちゃうから。いくつになっても、少しでも長く現場にいることが大事なんですね。そうすれば自分の寿命がおのずと延びてきます」

新曲について聞いた。

「本当の意味で昭和の匂いのする歌を歌いたい。たとえ平成の作品であっても、これ昭和の歌だよねという歌があったら歌いたい。僕は歌い手として、あらゆる先輩の歌をナマで聴いてきている。そういうのが体に入っている世代じゃないと、昭和の歌って難しいですよ」

65周年見据え

65周年はどのように見据えているのか。

「今は1週間やる場合にはどう歌うかとかを考えないで歌っている。それがどこで引っかかるか。あと半年で引っかかるのか、1年もつのか、2年行けるのか。〝お、来たな!〟っていう瞬間を感じた時、そこからもう1回、歌を軽くできるかどうか」と話し、こう続けた。

「いい意味で鼻歌にできるかどうか。それが多分、『セリフは歌え 歌は語れ』っていうことじゃないかと。野球に例えると、今はストレートだけで勝負していますが、絶対通じない時が来るわけです。元オリックスの星野伸之さんみたいに、130キロのストレートしか投げられないのに、90キロのカーブで勝負できるかどうかなんです。プロってそういうことです。テクニカルになったりキーを落としたりするのではなく、歌をあくまで〝プロの鼻歌〟として送り出せるか。そこにかかっているんです」

12月10日~大阪・新歌舞伎座「カウントダウン80′」

■舟木一夫(ふなき・かずお) 歌手、俳優。1944年12月12日生まれ、79歳。愛知県出身。「高校三年生」「学園広場」などがヒットし、橋幸夫、西郷輝彦とともに御三家の時代を築いたが、30代半ばから十数年、ヒット曲もテレビ出演もない〝寒い時代〟に突入。同世代だけを向いて再出発してから復活し、2年後には芸能生活65周年を迎える。

ツアーコンサート以外に、11月15日(金)~19日(火)=東京・新橋演舞場で「シアターコンサート」▽12月10日(火)~12日(木)=大阪・新歌舞伎座で「カウントダウン80’」。

(ペン・大倉明/カメラ・酒巻俊介)

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