2024年卒の学生を対象とした大学別実就職率ランクの第2回は、中規模大学を対象とした、「卒業生1000人以上3000人未満の大学別実就職率ランク」を見ていこう。
実就職率は、医学部と歯学部の単科大学を除く、すべての大学を対象に行ったアンケートの集計値で、24年は555大学(73・3%)から回答があった。実就職率の算出方法は、「就職者数÷(卒業生数―大学院進学者数)×100」。平均実就職率は88・8%だ。
ランキングをみて、まず気が付くのは、工科系大学の多さ。1位の愛知工業大をはじめ、3位大阪工業大、4位金沢工業大、5位名古屋工業大など、ランキング中の7大学を工科系大学が占めているのだ。就職アナリストは言う。
「研究や論文執筆などを通して、論理的思考力を身に付けた学生が多いことが理工系学部が就職に強い一因。近年は企業のIT化が進み、あらゆる業種から求められるようになり、理工系学生の就職の間口が広がったことも大きい」
この理工系学部がメインの工科系大学は、当然のことながら大学全体として実就職率ランキングの上位に入る。
ランキング上位の工科系大学は、長い歴史の中で多くのエンジニアを輩出してきた大学が多い。ランキング上位大学の開設年を見ると、愛知工業大が大正元年(1912年)、大阪工業大が大正11年(22年)、名古屋工業大が明治38年(05年)などとなっている。
このように戦前に設立した大学が多い中、金沢工業大は昭和32年(57年)設立と比較的新しい大学だ。ユーザーは何を必要としているのかチームで考え、解決策を具体化する「プロジェクトデザイン教育」により、社会人基礎力を身に付けた人材が育っていることが高い実就職率の背景にある。
工科系以外の状況を見ると、総合大学で2位に入った福井大は、複数の学部を持つ国立大の中で17年間トップを続けている。工学部の定員が多いことに加え、就職に強い資格がとれる医学部と教育学部を持ち、比較的就職に弱い学部系統の国際地域学部の実就職率も高いことがランキングに表れている。
7位には女子大の昭和女子大が入っている。卒業生1000人以上の女子大のなかで、12年連続で続いてきた1位の座は23年で途絶えたが、24年は再び1位に返り咲いた。
昭和女子大に限らず、女子大は全体的に就職率が高い。就職アナリストは言う。
「男女雇用機会均等法の施行前、女子の就職が厳しかったころから積み上げてきた面倒見のよい就職支援が効いている」
このカテゴリーの女子大では、愛知の椙山女学園大(95・1%)が13位、東京家政大(95・0%)が16位、兵庫の武庫川女子大(94・4%)が23位、東京の実践女子大(94・0%)が27位と、上位にランクインしている。
■井沢秀(いざわ・しげる) 大学通信情報調査・編集部部長。1964年2月6日、神奈川県生まれ。明治大学卒業後、受験情報・分析を主力事業とする大学通信入社。大学の入り口(入試)から出口(就職)まで、情報を収集し発信中。中高・大学受験の案内書・情報誌を編集するほか、新聞社系週刊誌、経済誌などへの情報提供と記事執筆を行う。