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森永康平の経済闘論 ソニーのKADOKAWA買収協議の背景、コンテンツが国の新たな基幹産業に 政府は33年までに20兆円産業に引き上げる目標

zakzak by夕刊フジ 2024年11月28日 6時30分

ソニーグループがKADOKAWAの買収に向けて協議をしているという報道が出てから、KADOKAWAの株価は一時ストップ高となり、上場来高値を更新した。その後、KADOKAWAは公式サイトで「当社は、当社株式の取得に係る初期的意向表明を受領しておりますが、現時点で決定した事項はありません」と発表したため、少なくともソニーグループが同社に強い関心を示していることが判明した。

KADOKAWAというと角川文庫や角川新書などの出版事業がイメージされるが、2024年3月期のセグメント別売上高をみてみると、55%が「出版・IP創出」から生み出されており、IP(知的財産)の創出も主業となっていることが分かる。同社のIPというと、筆者は最近だと絵本の「パンどろぼう」にハマっている。世界でも有名なポケモンやハローキティには劣る印象があるが、N高やニコニコ動画、ニコニコ超会議などを抱えており、事業間のシナジー効果がはたらくことで熱狂的なファンが多いIPを創出できる環境にある。

世界的にユーチューブや動画配信サービスが普及したことで日本のアニメ人気が高まっていることもあり、政府も1つの基幹産業にしようとしている。「新しい資本主義実現会議」の資料によると、世界のコンテンツ市場の規模は石油化学産業、半導体産業よりも大きく、日本由来コンテンツの海外売上高は、鉄鋼産業、半導体産業の輸出額に匹敵する規模となっている。政府は国策として33年までに約4倍の20兆円産業に引き上げる目標を打ち出している。

投資の世界には「国策は買い」という格言があるが、おそらくソニーグループはKADOKAWAのIP創出機能に注目しているのだろう。

KADOKAWAはアニメ・実写映像、ゲームのセグメントも抱えており、ソニーグループもゲーム、映画、音楽といったセグメントを抱えているため、これらのシナジー効果は容易に想像ができるが、買収が現実のものとなった暁にはそれ以外の事業展開にも期待が膨らむ。

たとえば、世界的にも強いハローキティをはじめとするIPを抱えるサンリオはピューロランドやハーモニーランドなどのテーマパーク事業を運営している。仮にソニーグループがKADOKAWAのIPを活用してテーマパーク事業を開始した場合、アトラクションの映像や音響などでソニーの技術を活用することも可能であり、非常に両社の相性は良さそうに感じる。

■森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。

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