自民党総裁選(12日告示、27日投開票)では、小泉進次郎元環境相(43)が高い知名度などから一歩リードとされる。ただ、立候補表明した記者会見で語った「選択的夫婦別姓の導入」に関する発言では、いくつかの事実誤認があったようだ。ジャーナリストの宮田修一氏が緊急寄稿した。
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ジャーナリスト宮田修一氏が緊急寄稿
「首相になれば夫婦別姓を認める法案を国会に提出し、国民的な議論を進める」「もう議論ではなく決着をつけるときではないか。一人ひとりの人生の選択肢を拡大する」
小泉氏は6日の出馬会見でこう語り、旧姓使用が問題となる具体例として、「不動産登記」や「特許の取得」などを挙げた。つまり、新たな法律や条例が必要となる立法事実として指摘したわけだ。
「不動産登記」「特許の取得」旧姓の使用拡大
ところが、不動産登記については、法務省がHPに「不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6=2024=年法務省令第7号)により、現在の所有権の登記名義人の氏名に旧氏(旧姓)を併記することができるようになりました」(同年7月2日)と掲載している。
特許の取得についても、特許庁のHPには「特許庁への手続において、氏名欄への旧氏の併記を許容することになりましたのでお知らせします」(同3=21=年10月1日)とある。
事実上の次期首相を選ぶ総裁選の出馬会見で、事実誤認があったとすれば恥ずかしい。「旧姓の使用拡大」が次々に認められているのだ。
ちなみに、小泉氏は記者会見で、「多くの金融機関では旧姓で銀行口座やクレジットカードを作ることができない」とも語ったが、内閣府男女共同参画局と金融庁監督局の「旧姓による預金口座開設等に係るアンケート結果概要」(同4=22=年9月6日)は以下の通りだ。
銀行では62・4%が「旧姓による新規口座開設、既存口座の旧姓維持の双方に対応している」といい、6・4%が「既存口座の旧姓維持のみに対応している」と回答した。「旧姓口座に対応していない」のは31・2%だけだ。
信用金庫でも約6割が、旧姓名義による口座開設等に対応している。信用組合は1割強にとどまっている。
憲法学者で日大名誉教授の百地章氏は「小泉氏は記者会見で『私が総理になったら法案を国会に提出する』とまで言い切った。(旧姓の使用拡大を)『知らなかった』では済まされない。基礎的勉強さえやっていない可能性がある。自民党員や国会議員は、彼の器量を見極めるべきだ」と語っている。