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石破首相が「戦後最短の就任8日後」に解散強行 自公過半数割れも 2024年秋衆院選・政党別議席予測、松田馨氏が分析

zakzak by夕刊フジ 2024年10月9日 11時30分

石破茂首相(自民党総裁)は9日午後、戦後最短「就任8日後の衆院解散」を強行。与野党は「15日公示、27日投開票」の衆院選に突入する。国民世論の人気が強みだった石破首相だが、閣僚・党役員人事での「論功行賞」や「保守派外し」、政策論のブレなどで、内閣支持率は伸び悩んでいる。加えて、派閥裏金事件で、すでに党処分を受けた旧安倍派議員らを新たに「非公認」「比例重複を認めない」とする方針を打ち出し、党内は「私怨(しえん)」「安倍派潰しだ」などと紛糾している。情勢分析で定評のある選挙プランナーの松田馨氏に政党別獲得議席予測を依頼したところ、自民党は単独過半数を失うとの結果が出た。石破首相への逆風がさらに強まれば「自公与党の過半数割れ」もあり得そうだ。「政界再編」も見据えた政治決戦が始まる。

「すべての同志が勝ち残るよう全身全霊で選挙に臨む」

石破首相は9日、自民党選挙対策本部会議に出席し、衆院選を前にこう語ったが、自民党の情勢は厳しそうだ。松田氏は、投票率を前回2021年衆院選の55・93%を下回り、51~52%程度と想定して分析した。

自民党は、現有256議席から30議席減、「小選挙区165、比例61の226議席」という予測だ。衆院定数(465議席)の単独過半数(233議席)を割り込み、今後の展開次第でさらに減らすという。

衆院常任委員会の委員長ポストを独占し、委員数でも野党を上回る「絶対安定多数(261議席)」、さらに全委員会で委員長を出せる「安定多数(244議席)」も失えば、国会運営に重大な影響を及ぼす。

松田氏は「石破首相は総裁選などで主張していた改革や政策論を実行せず、『言行不一致』との批判を招き、報道各社の世論調査で期待した〝ご祝儀〟はなかった。内閣支持率が50%前後にとどまる一方、不支持率が高く出ていることは大きな不安材料だ。総裁選で『疑似政権交代』を演出したが、国民の自民党への不信感や怒りは払拭できなかった」と分析する。

確かに、永田町では石破内閣の〝看板倒れ〟や〝期待外れ〟を指摘する声が多い。

石破首相は総裁選後、「ノーサイド」を宣言したが、第1回投票でトップだった高市早苗前経済安保相に幹事長ポストを打診せず、決選投票で自身を推した側近や旧岸田派、菅義偉副総裁に近い面々を閣僚や党役員に集めた。中でも、安倍晋三元首相を「国賊」と罵倒した、村上誠一郎氏の総務相起用には、保守層に憤怒の声が広がった。

さらに、裏金事件に絡み、4月に党処分を受けた旧安倍派議員らを、衆院選で「非公認」「比例重複を認めない」とする方針を打ち出したことで、党内対立は決定的となった。

松田氏は「石破首相は、裏金事件をめぐっても、各議員の事情が違うことを国会で丁寧に説明し、理解を得るべきだった。内閣支持率や選挙の情勢調査に厳しい結果が相次いだことで、唐突な〝追加処分(二重処分)〟の対応となった。これでは世論の不信感を加速させるだけだ」と指摘する。

公明党は山口那津男氏が代表を勇退し、石井啓一氏が新代表に就任した。注目の初陣は、現有の32議席から3議席減、「小選挙区8、比例21の29議席」。自公両党が小選挙区での候補者調整などで対立した不協和音の解消がカギとなりそうだ。

一方、野党第一党の立憲民主党は、先月の代表選で野田佳彦体制となった。現有の98議席から24議席増やし、「小選挙区79、比例43の122議席」を獲得しそうだという。石破自民党の〝自爆〟が追い風だが、過半数には遠く及ばない。候補者擁立も遅れ気味だ。

■日本保守党「小選挙区1、比例1」で2議席

松田氏は「新代表となった刷新感もあり、立憲民主党は都市部を中心に小選挙区で競り勝つだろう。ただ、(日銀の物価安定目標を『0%超』に変更する金融政策転換など)現実味のない経済政策が猛批判を受けている。現状では、有権者の判断基準は『自民党に投票するか、否か』だ。共産党との連携頼みの傾向も強い」と語る。

大阪中心に根強い人気を誇る馬場伸幸代表の日本維新の会は、現有45議席で、「小選挙区19、比例26の45議席」との予測。前原誠司氏が率いる教育無償化を実現する会が本格的に合流するが、議席数は横ばいとなりそうだ。

松田氏は「大阪万博への批判や、議員らの不祥事もあって、一時の勢いを失った。比例票で伸び悩む」と語る。兵庫県知事だった斎藤元彦氏の問題も影響しそうだ。

玉木雄一郎代表の国民民主党は、現有7議席から「小選挙区4、比例7で11議席」に伸ばす見通しだ。

松田氏は「玉木氏はユーチューブで継続的な発信を行い、30~40代の『現役世代』に一定の支持がある。労働組合の支援を基盤に、ネット上の好感が乗れば、勢力を伸ばすだろう」とみる。

田村智子委員長の共産党は幹部パワハラ騒動や、党首公選制を求めた党員除名などが尾を引くが、自民党の退潮により、現有10議席から「小選挙区1、比例10の11議席」獲得の可能性がある。福島みずほ党首の社民党は「1議席」を守りそうだ。

新興勢力では、山本太郎代表のれいわ新選組は、現有3議席から「5議席」。神谷宗幣代表の参政党は新たに「2議席」を得る可能性がある。松田氏は「保守・リベラル系、それぞれの新興勢力として統一地方選で地方議会に議席を獲得した。ネットも活用して存在感を増している」と語る。

ベストセラー作家の百田尚樹氏と、ジャーナリストの有本香氏が立ち上げた政治団体「日本保守党」は今回、河村たかし名古屋市長を小選挙区の愛知1区に擁立する。百田氏と有本氏も比例で出馬する。「小選挙区1、比例1で2議席」獲得の可能性があるという。

松田氏は「衆院東京15区補選などで、一定の票を獲得してきた。ユーチューブなどインターネットメディアを中心に関心が高く、保守系の票をさらに取り込めるかがカギだろう」と指摘する。

石破自民党が危機に瀕(ひん)するなか、野党も爆発的な伸びを欠く展開だが、松田氏は、今後の情勢をどうみるのか。

「自民党は、立憲民主党と日本維新の会の選挙区調整が難航するとの観測から、『野党に準備の隙を与えない』との判断で短期勝負に打って出たが、つまずいている。選挙は本来、相手の弱点を突くこと以上に『強み』で勝負しなければならない。石破首相の強みは熟議なのに、小手先で策を弄した。『ルールを守る。ウソをつかない。公正・正直』と言い続けた石破首相への失望につながっている。一方、立憲民主党も政権交代が期待される野党第一党ではなく『自民党批判の受け皿』にとどまっている。ただ、石破首相の今後の対応次第で、自民党への不信感はさらに広がり、深刻な事態を招く恐れは拭えない」

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