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東証発、世界同時暴落「岸田・植田ショック」が自民総裁選も直撃 次期総裁が〝金融引き締め派〟なら市場低迷に拍車も

zakzak by夕刊フジ 2024年8月6日 11時25分

暴落元凶

5日の東京株式市場で日経平均株価は史上最大の下げ幅となる4451円安を記録し、アジア、欧州、米国市場も「世界同時暴落」となった。要因として米国の景気減速懸念が指摘されるが、日経平均は3営業日で7643円安と約2割も下げており、日本が暴落の〝震源地〟となった。日銀が7月末に追加利上げを決め、植田和男総裁がさらなる利上げを示唆したことで円高株安が進んだ。そして岸田文雄首相ら政府・与党関係者が「円安対策」や「金融正常化」として事実上、利上げを要請しており、今回の暴落は「岸田・植田ショック」ともいえる。9月の自民党総裁選の候補も〝利上げ・金融引き締め派〟が多く、総裁選の結果がさらなる市場の低迷を招きかねない。

週明け5日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は3営業日続落し、前週末比1033・99ドル安(2・60%)の3万8703・27ドルで取引を終えた。下げ幅は2022年9月以来、約2年ぶりの大きさだった。

5日の市場では、韓国の主要株式指数も9%安、台湾の主要指数も8%安だった。欧州の主要指数も2~3%台下落したが、同日の日経平均は12・4%安と下落率が突出している。

東京外国為替市場で1ドル=141円台まで進んでいた円高が、6日には144円台まで円安方向に戻った。株価も3営業日で約2割暴落したことから、いったんは反発局面となるとみられる。ただ、元の4万円台まで戻る道のりは相当に険しそうだ。

経済の現状は決して順調ではない。実質国内総生産(GDP)の半分程度を占める個人消費は24年1~3月期まで4四半期連続のマイナスだ。そして日銀自身が、経済成長率や消費者物価指数の見通しを下方修正している。

にもかかわらず日銀は利上げを決めただけでなく、植田総裁は記者会見で、年内のさらなる追加利上げについても否定しなかった。

国民民主党の玉木雄一郎代表は「消費は弱く、賃上げも中小企業に広がっていない。利上げと、植田氏の『金利を上げ続ける』とのメッセージは非常にまずかった」との認識を示す。

日銀はこれまで、金融引き締めに踏み切っては失敗する歴史を繰り返してきた。2000年8月にゼロ金利政策を解除したが、ITバブルの崩壊もあり景気は低迷した。06年3月には量的緩和政策を解除し、その後利上げも行ったが、デフレは泥沼化し、08年のリーマン・ショックで日本経済が大打撃を受けた。

元日銀審議委員でPwCコンサルティングの片岡剛士チーフエコノミストは「日銀は利上げと国債買い入れ額の減額を継続して行うことを表明することで、金融引き締めのコミットメント(公約)を明確にしてしまった。今回の株安・円高はこうした日銀の決定がいかに誤ったものであるかを示したものだ。日銀は失敗を認め、早期に方向転換を行わなければ、過去の失敗と同様の結果となるだろう」と指摘した。

こうした歴史は日銀自身も百も承知のはずだが、政府・与党から利上げを促す発言が相次ぎ、外堀が埋められた。

岸田文雄首相は7月19日、経団連の夏季フォーラムで講演し「金融政策の正常化が経済ステージの移行を後押しする」と発言した。22日には自民党の茂木敏充幹事長が講演で「金融政策を正常化する方針を明確に打ち出すことが必要だ」と踏み込んだ。「正常化」というのは、要は利上げを求めることで、アベノミクスの否定でもある。

河野太郎デジタル相も海外メディアで円安対策としての利上げに言及したと報じられた。

急激な円安を食い止めようと、政府は円買いドル売りの為替市場介入を連発した。為替介入を主導した財務省の神田真人前財務官は内閣官房参与として官邸に入った。政府からは「できる限りのことはした。次は日銀の番だ」(経済官庁幹部)との声も聞かれていた。

自民党総裁選の候補では、石破茂元幹事長もアベノミクスの金融緩和に否定的な発言を繰り返してきた。

高市早苗経済安保相は自身の勉強会「『日本のチカラ』研究会」にアベノミクスの指南役の一人である本田悦朗元内閣官房参与を招いているが、総裁選の候補としては少数派のスタンスだ。

金融引き締めや利上げ路線の人物が次期自民党総裁に選ばれた場合、株価や為替、経済がどうなるか。今回の暴落劇は市場の懸念が反映された形だ。

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