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岩田明子 さくらリポート 自民党総裁選へ向け相次ぐ保守政策の発信、行動問われる岸田首相と石破氏 都知事選で起きた「石丸現象」…小林鷹之にも注目

zakzak by夕刊フジ 2024年8月13日 12時0分

9月の自民党総裁選に向け、有力政治家による「保守政策の発信」が相次いでいる。

岸田文雄首相(総裁)は7日の自民党憲法改正実現本部で、「国民の命を守るという国家の最も重要な責務を、この国の最高法規の中にしっかり明記する」と述べ、8月末までに憲法9条への自衛隊明記に関する論点を整理するよう指示した。

世論調査で人気の高い石破茂元幹事長は7日、政治姿勢や政策をまとめた新著を出版した。そのタイトルは『保守政治家 わが政策、わが天命』で、憲法改正については、戦力不保持をうたった9条2項を削除したうえで、自衛隊を「国防軍」に改め憲法に明記すべきと強調した。

ロシア、中国、北朝鮮という覇権主義的国家に囲まれた日本周辺の安全保障環境が悪化を続けるなか、日本を守るべき自衛隊の存在が憲法に記されていない。5月に公表された共同通信の世論調査では9条改正の必要性を「ある」としたのが51%、同月発表の読売新聞の調査でも9条2項を改正する必要が「ある」と答えたのが53%に上った。

過半数の国民が9条改正に賛成しているとの調査もあるのだから、その声に向き合って国会で着実に議論を進めていくのが政治家の仕事であろう。岸田首相、石破氏が、改憲に言及したのは当然の流れといえる。

ただ、2氏が保守層の支持を得られるかは行動次第だ。

岸田首相は施政方針演説などで再三、「総裁任期中の改憲実現」を表明した。国民投票は、国会の発議から60~180日以内に行うと定められ、9月までの改憲実現には、先の通常国会中に原案を固めて発議まで進む必要があった。ところが、議論を深めるための国会会期延長もなく、「言行不一致」との批判も耳にする。

昨年6月に成立したLGBT理解増進法をめぐって強い反対があったにもかかわらず、拙速に議論を進めた姿勢も保守層の信頼を失う要因の1つとなっている。岸田首相は改憲で結果を出せなければ、さらなる批判にさらされる可能性がある。

石破氏は最近、保守派から疑念を抱かれるような発言が続いている。安定的な皇位継承策をめぐって「女系天皇」を排除しないとの認識を示したほか、選択的夫婦別姓制度の導入については「夫婦が別姓になると家族が崩壊するとか、よく分からない理屈があるが、やらない理由がよく分からない」と述べた。

日本の諸課題解決のため、保守派が求められているなか、ほかの保守政治家の存在にも触れてみたい。

安倍晋三政権で官房副長官、拉致問題担当相、厚労相を歴任し、菅義偉政権では官房長官を務めた加藤勝信氏は経験豊かだが、各種世論調査の支持率が低いという課題がある。前回総裁選(2021年9月)で安倍元首相の後押しを受けた高市早苗経済安保相は保守層の期待はあるものの、総裁選出馬に必要な国会議員20人の推薦を集められるかが不透明だ。

49歳の小林鷹之前経済安保相も注目を集めている。党内の若手・中堅から「待望論」があり、各メディアでも小林氏の発言が報じられることが増えている。7月の東京都知事選では、既存政党への不信もあり、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が2位になるという「石丸現象」が起きた。有権者が政治家に清新さを求める流れが強まっていけば、総裁選に向けて小林氏の存在感が今後、高まっていく可能性も十分ありそうだ。

■岩田明子(いわた・あきこ) ジャーナリスト・千葉大学客員教授、中京大学客員教授。千葉県出身。東大法学部を卒業後、1996年にNHKに入局。岡山放送局で事件担当。2000年から報道局政治部記者を経て解説主幹。永田町や霞が関、国際会議、首脳会談を20年以上取材。22年7月にNHKを早期退職し、テレビやラジオでニュース解説などを担当する。月刊誌などへの寄稿も多い。著書に『安倍晋三実録』(文芸春秋)。

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