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1万本を見た映画記者 極私的スター名鑑 シルベスター・スタローン 自作自演の低予算映画「ロッキー」でアメリカンドリームを実現 一夜にして世界のスーパースターに

zakzak by夕刊フジ 2024年8月14日 15時30分

無名の俳優がスターになるにはどうすればいいのか。シルベスター・スタローンは自分で脚本を書いた低予算映画「ロッキー」(1976年、ジョン・G・アビルドセン監督)に主演し、一夜にして世界のスーパースターになった。

無名ボクサーが無敵の世界チャンピオンと対戦する物語は、半年遅れで公開された日本でも社会現象になるほど大ヒットした。洋画配給会社とスタローンは筆者を含めた映画記者3人をハリウッドに招待してくれた。

飛行機のトラブルでロサンゼルス到着が一日遅れたが、スタローンと当時の妻、サーシャは有名ホテルで立食パーティーを開いて日本人を歓迎してくれた。その翌日に単独インタビュー。

素顔の彼は気配りをする実直な苦労人で、身長を高く見せる厚底ブーツを履き、あまりの名声にとまどっていた。

「仕事もお金もなかったけど、時間はあったので図書館に通って脚本の勉強をした。ロッキーの物語は、テレビで見たボクシング中継をヒントに3日間で書いた」

スタローンはアカデミー賞の主演男優賞と脚本賞の候補になった。ハリウッドの歴史でその両方の候補になったのは、チャールズ・チャプリンとオーソン・ウェルズ、マット・デイモンだけである。

その後の半世紀に及ぶ活躍は説明するまでもないだろう。監督業にも進出した「ロッキー」シリーズはもちろん、大ヒットした「ランボー」シリーズや最近では豪華キャストの「エクスペンダブルズ」シリーズも自分で脚本を書いている。

肉体派を代表する彼は大衆が求めているものをよく知る、勤勉と努力の頭脳派でもある。失敗作も多いのだが、何度でも復活する不屈の精神力は尊敬に値する。

■垣井道弘(かきい・みちひろ) 1946年、広島県三原市生まれ。明治大学文学部卒。週刊誌「女性自身」の記者を経て、映画評論家になる。著書に「MISHIMA」(飛鳥新社)、「今村昌平の製作現場」(講談社)、「ハリウッドの日本人」(文芸春秋)、「緒形拳を追いかけて」(ぴあ)などがある。

■シルベスター・スタローン 1946年7月6日生まれ、78歳。米ニューヨーク出身。

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