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列島エイリアンズ ベトナム系大麻工場編(3) 日本の密売組織と出稼ぎ・技能実習生が結託、単なる不良外国人の悪行ではない コロナと円安で加速した大規模栽培

zakzak by夕刊フジ 2024年8月7日 6時30分

販売目的で大麻栽培に手を染めた在日ベトナム人が逮捕される事件が激増している。背景として、在日ベトナム人社会に潜む大麻愛好者の多さを指摘する声もある。実際、彼らが集うSNSのコミュニティーに大規模な栽培施設の写真や24時間配達をうたう書き込みなどが投稿されていた。

だが、それにしても変である。直近で摘発されたベトナム人による大麻栽培の事例を見てみても、大麻草の押収量は数百本から数千本と大量なのだ。ベトナム人在留者が60万人いるとして、比較的、大麻愛好者が多いと仮定しても、簡単にさばき切れる規模ではない。

そんな疑問を解消するのが、違法薬物の流通事情に詳しいA氏の証言だ。「在日ベトナム人が栽培する大麻の多くは、日本人社会にも流通している」と明かす。

「7~8年前の在日ベトナム人社会では3000円ほどで流通していて、当時から、その安さに引かれ、在日ベトナム人から大麻を買う日本人がいた。現在は、乾燥大麻の末端価格はグラム5000~7000円ほどと言われているが…」

大規模栽培が行われるようになったのは、ここ数年のことという。

「2020年のコロナ禍で国境をまたいだ往来が難しくなった上、ハンドキャリーでの密輸となり、大麻やリキッドがなかなか入ってこなくなった。そこで日本の密売組織が目をつけたのが、ベトナム系の大麻栽培者たち。大麻の室内栽培は大規模にやるとLED照明などにかかる電気代が一日中大量にかかるので、警察に怪しまれて捕まるリスクが高いが、ベトナム人はお構いなし。円安の影響で母国に仕送りできる金額が減った出稼ぎや技能実習生などカネをほしがっているヤツらがいくらでもやってくれる。コロナ終息後も、日本の密売組織とベトナム人の栽培者が手を組んだ形での大麻流通が着実に増えている」

在日ベトナム人の大麻栽培事件は、単なる不良外国人の悪行として片付けられそうにない。

=この項おわり

外国人材の受け入れ拡大や訪日旅行ブームにより、急速に多国籍化が進むニッポン。外国人犯罪が増加する一方で、排外的な言説の横行など種々の摩擦も起きている。「多文化共生」は聞くも白々しく、欧米の移民国家のように「人種のるつぼ」の形成に向かう様子もない。むしろ日本の中に出自ごとの「異邦」が無数に形成され、それぞれがその境界の中で生きているイメージだ。しかしそれは日本人も同じこと。境界の向こうでは、われわれもまた異邦人(エイリアンズ)なのだ。

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。

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