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1万本を見た映画記者 極私的スター名鑑 薬師丸ひろ子 桃太郎のように潔い美少女が映画界を席巻 舞台あいさつで機動隊出動 還暦迎えたと知り「光陰矢の如し」を実感

zakzak by夕刊フジ 2024年7月31日 6時30分

事件だった。1981年12月。大阪の映画館で予定されていた、薬師丸ひろ子主演「セーラー服と機関銃」(相米慎二監督)の舞台あいさつは、8000人のファンが押し寄せたため、機動隊が出動する騒ぎとなり中止になった。一般紙も大々的に報道したので覚えている人も多いだろう。

薬師丸は14歳のとき、「野性の証明」(78年)のオーディションで高倉健の相手役に選ばれ、華々しく映画デビュー。テレビの露出が少なかったことが逆に彼女の人気を加速させた。学業優先を貫き、都立八潮高校から玉川大学文学部英米文学科に進学し卒業。映画の撮影は学校の夏休みや春休みに限定された。

松田優作と共演の「探偵物語」(83年)も大ヒット。筆者は撮影が終わった日に銀座の喫茶店で単独インタビューした。――みんなに期待されているので相当なプレッシャーがあるでしょ?

「それは、なんにもない(笑い)。考えても仕方ないしね。学校と仕事で大変でしょと言われるけど、中学生の時からずっとやってきたので違和感がないんです」

小柄で小顔、得意科目は体育。絵本の桃太郎のように潔い19歳の美少女は、愛想笑いのアイドルではなくて相手の目を見て話す女優だった。

その後の歌手活動はよく知られている。私生活では91年に歌手の玉置浩二と結婚し、98年に離婚した。

映画では「Wの悲劇」(84年)でブルーリボン賞主演女優賞、「8年越しの花嫁/奇跡の実話」(2018年)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞。「とんび」(22年)では小料理屋の女将役を好演した。今年も出演作が続いている薬師丸ひろ子が還暦を迎えたと知って<光陰矢の如し>を実感するばかりだ。

■薬師丸ひろ子 1964年6月9日生まれ、60歳。東京都出身。

■垣井道弘(かきい・みちひろ) 1946年、広島県三原市生まれ。明治大学文学部卒。週刊誌「女性自身」の記者を経て、映画評論家になる。著書に「MISHIMA」(飛鳥新社)、「今村昌平の製作現場」(講談社)、「ハリウッドの日本人」(文芸春秋)、「緒形拳を追いかけて」(ぴあ)などがある。

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