1月4日付産経新聞の「石破首相が今年直面する3つの壁」という記事によると、壁は2月末の「予算案の衆院採決」と、3月末の予算成立後の「石破おろし」、さらに6月の国会会期末の「内閣不信任案」の3つあるという。
これに7月の「参院選」を加えた4つが、石破茂首相が当面迎える壁になる。年末年始にかけて他のメディアも「壁」について伝えていたが、共通していたトーンは「この壁を乗り越えるのは難しい」ということだった。
だが、私は壁を打ち破る方法はあるのではないかと思っている。
まず、最初の「予算案の衆院採決」の壁だが、確かに少数与党となったので野党の助けを借りないと予算は通らない。
昨年末の補正予算は、それぞれ「減税」と「教育無償化」で与党と基本合意した国民民主党と日本維新の会が賛成した。また、立憲民主党の主張も一部取り入れた。
その後、国民民主党との減税協議は難航しているようだが、3つの野党が「場合によっては予算に賛成」という姿勢を見せているというのは与党にとっては予算成立に向けて明るい材料だ。すなわち、野党の要求を飲めば予算は通るのだから、最初の壁は言われるほど「厚く」はない。
予算が通るということは、内閣不信任案も可決されない。つまり3つ目の壁もなくなる。
問題は2つ目の壁の「石破おろし」だが、現状では非主流派とされる高市早苗前経済安保相や旧安倍派の議員たちの間からも、また主流派からも「石破おろし」の声はまったく上がらない。
石破首相は年末の講演で「誰も褒めてくれない。寝る時間もほとんどない」とグチっていた。確かに、少数与党の首相ほど辛い仕事はない。石破首相をおろして高市氏、あるいは最近よく名前の出る林芳正官房長官あたりが首相になっても、野党に頭を下げ続け、おそらく誰からも褒めてもらえない。そんな首相になりたがる人がいるのか。
一部には、「主に立憲民主党との一人区の争いになる参院選は、野党の選挙協力がまとまらなければ与党は過半数確保できるのではないか」という読みがある。そうであれば、このまま「石破さんに頑張ってもらおう」ということになるかもしれない。
つまり2の壁、4の壁もなくなり、石破政権はしばらく続くということになる。
一つ注意した方がいいことがある。
それは予算を通すときに、国民民主党を捨てて日本維新の会や立憲民主党に「乗り換える」のは危険だということだ。世論調査を見る限り、国民民主党の人気は高いので有権者が怒る可能性がある。
さらに、まさかやらないとは思うが、選択的夫婦別姓と予算をバーターにするなどやめた方がいい。自民党は本当に分裂するので。石破政権は少数与党ながら野党が決定力に欠けるため細々と存続するかもしれない。
だが、有権者を怒らせたら、あっという間に政権を失うことになるだろう。 (フジテレビ客員解説委員・平井文夫)