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ニュースの核心 「対中外交」新総裁が直面する重要課題 領空侵犯・靖国落書き・スパイ疑惑…繰り返される暴挙も 中国に〝すり寄る〟外交青書

zakzak by夕刊フジ 2024年9月27日 14時20分

自民党は27日午後、総裁選の投開票を行い、第28代総裁を選出。過去最多9人が立候補する大乱戦で、石破茂元幹事長(67)と、高市早苗経済安保相(63)、小泉進次郎元環境相(43)の「3強」らが熱い論戦を展開した。新総裁は来週30日にも新執行部を発足させ、10月1日召集の臨時国会で首相指名選挙が行われ、新内閣がスタートする。派閥裏金事件を受けた信頼回復や、物価高に対応する経済・財政政策などが注目されるが、中国は総裁選に合わせるように軍事的威嚇を仕掛けてきた。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、国民の生命と財産を守り抜くため、新総裁が着手すべき重要な政策課題を指摘した。

誰が自民党の新総裁になろうと、見直しが不可欠な重要政策課題がある。「対中外交」だ。日本は、中国を「日本と世界の平和と安全を脅かす脅威」と認識して、米国とともに抑止に全力を挙げなければならない。

中国は1992年に公布した領海法で沖縄県・尖閣諸島を一方的に「中国領土」と宣言し、2012年からは公船や漁船を装った船による領海侵入を繰り返してきた。これだけでも許せないが、最近は挑発行動を一段と先鋭化させている。

靖国神社の相次ぐ落書き・放尿事件に続いて、NHKラジオ国際放送での放送テロ(=中国籍の男性外部スタッフが尖閣諸島を『中国の領土』と発言)、軍用機による長崎県・男女群島上空への領空侵犯、さらには空母「遼寧」など3隻が沖縄県・与那国島と西表島の間の接続水域に侵入する事件も起きた。

これとは別に、中国の非公式警察署が日本を含めた世界の50カ国以上に設置されていた問題や、日本の公安調査庁に中国のスパイが浸透していた疑いも指摘されている。中国は日本の主権や国際法を完全に無視しているのだ。

そんな中国を日本政府はどう認識しているか、といえば、まったく甘い。それどころか、日本と中国は「お互い様の関係」であるかのように捉えている。外交青書は、こう書いている。

《(中国は)最大の戦略的挑戦。「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、日本として主張すべきは主張し、中国に対し責任ある行動を強く求めつつ…「建設的かつ安定的な日中関係」の構築を双方の努力で進めていくことが重要である》

中国が日本を脅かしているのは明らかなのに、非難するどころか、逆に日本の側から「お互いの利益になりますよね」と中国にすり寄っている。

深圳での日本人男児刺殺事件でも、日本は事実関係の説明と再発防止を求めることしかできなかった。だが、「事実はこれこれだった」という説明を聞いてしまったら、それ以上、追及のしようがない。個別事件として片付けたい中国の「思う壺」にハマってしまう。

「対中外交の見直し」

なぜ、こうなるかといえば、そもそも最初の対中認識が誤っているからだ。

刺殺事件は長年の「反日」運動が真の理由である。「反日」を煽った中国共産党の責任追及こそが、議論の出発点でなければならない。

それには、まず「中国はわが国を脅かす脅威である」という認識を日本の国民と世界に明らかにする必要がある。そのうえで、対抗措置を検討すべきだ。

当たり前の対中政策ができないのは、日本国内の「親中派」「媚中派」におもねっているからだ。

ジョー・バイデン米政権も「中国は戦略的挑戦」と認識している。日本の対中認識は、バイデン政権からの借り物だ。岸田政権の「バイデンべったり」ぶりが、ここでも示されている。

言い換えれば、新政権が対中認識を改められるかどうかは、「日本が米国から自立できるかどうか」の試金石でもある。中国を脅威と認識すれば、自衛力の強化は当然、必要になるし、その延長線上に「核抑止力の議論」も視野に入ってくる。

逆に、互恵関係にこだわるなら、中国は一層、居丈高になるだろう。「対中外交の見直し」こそが、新政権の最重要課題である。

長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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