名古屋市長選が24日、投開票され、元副市長で日本保守党と地域政党・減税日本が推薦した広沢一郎氏が初当選した。元参院議員で国民民主党の代表代行なども務めた大塚耕平氏は同党や自民、公明、立憲民主各党が推薦したが、大きく引き離され敗退した。
この結果を分析したい。
広沢氏は、2009年から名古屋市長を5期務めた河村たかし前市長の「後継」である。河村氏は自身の報酬を年額800万円に減らし、市議らの報酬も減額し、「市民税減税」を行った。「税収の伸び率日本一」「市民に年間100億円を返している」と訴え、地元では圧倒的な人気を誇っていた。
その河村氏は10月の衆院選に日本保守党から出馬し、15年ぶりに国政の舞台へ戻った。同党は衆院選で3議席を獲得。比例区でも114万5622票を得て、公職選挙法などに基づく政党要件の「得票率2%」を満たすなど躍進した。
同党は、インターネット戦略も積極的だ。今年4月の衆院東京15区補選で、公認の飯山陽氏は動画配信などが注目を集め、地縁が皆無にもかかわらず、2万4264票で9人中4位に躍り出た。小池百合子都知事や、国民民主党の玉木雄一郎代表が全面支援した乙武洋匡氏よりも4609票も多く獲得した。
〝進撃〟を続ける日本保守党の新たな成果となったのが名古屋市長選なのである。
一方、大塚氏の〝出身母体〟である国民民主党は、先の衆院選で、減税や負担軽減によって「国民の手取りを増やす」と訴え、7議席から28議席へと躍進した。
名古屋市長選でも、玉木代表や榛葉賀津也幹事長らが現地に入り、「大塚さんがわが党の減税路線の提唱者」と訴えたが、方向性が似た河村氏の「減税路線」を踏襲する広沢氏に後れを取った。ネット戦略でも及ばなかったといえそうだ。
ちなみに、衆院選で国民民主党の名古屋市内の比例票は14万8624票だった。自公与党と立憲民主党の票を加えると計62万6948票。一方、日本保守党が同市内で獲得した比例票は7万5842票に過ぎなかった。ある関係者は、こう指摘する。
「自公の動きはいまいち良くなかった。日銀出身で頭が切れる大塚氏は、煙たがられたのかもしれない。名古屋の政治的な土壌が影響したようだ」
河村氏は若い頃、旧民社党委員長も務めた春日一幸氏の秘書を務め、いまだにその影響が強いという。要するに、同市内の旧民社党系の票のうち、かなりの部分が、河村氏の後継にあたる広沢氏に流れたというのだ。
大塚氏の敗北は、国民民主党の躍進を止めるのか。同党が主張する「年収103万円の壁」の撤廃や、「トリガー条項凍結解除」はどうなるのか。経済政策を論じる臨時国会は、28日に召集される。 (政治ジャーナリスト)