着るだけで身体機能をサポートする機能性ウエア「リライブウェア」の製造・販売を手掛けるのが「りらいぶ」だ。佐々木貴史社長(63)はさまざまな事業を手掛けてきたが、55歳にして自らの使命を「困っている人を救うこと」と気づいて商品開発に心血を注いだという。リライブウェアはゴルフなどスポーツのパフォーマンスサポートにつながるという利用者の声が出ているほか、介護の現場や地方自治体などでも活用されている。
「医療機器」で申請
――商品の特徴を教えてください
「『着る医療機器』と言っているのは『リライブシャツα』で、医療機器の届け出を行っています。血行促進や疲労の回復・改善、筋肉のハリ・コリの改善といった健康効果が期待できます」
――シャツの裏側に秘密があるとか
「特殊な加工をした『テラヘルツ』など数種類の鉱石を塗料に混ぜ込み、特定のツボに沿って配置する形でシャツにプリントしています。これが自社開発の『間接テーピング技術』で、筋肉をサポートし、血流促進を促します」
――着用することでどんな効果が期待できるのですか
「リライブウェアを着用すると、血行が促進されます。多くの方から身体をサポートし、コンディションを調整するとの声をいただいています。また、第三者機関でのエビデンスも取得しており、今後も様々な機関での効果検証も行っているところです」
――ゴルファーにも人気だそうですね
「多くのゴルファーの方にも愛用いただいています。ゴルフ用品店にも商品を置いていただくようになりましたが、実はインナー(下着)として売り始めてからよく売れるようになりました。ゴルファーの心理としては、シャツのおかげだと思われたくないようです」
通販だけで10億円
――出川哲朗さんが登場するCMも話題です
「リライブシャツα(一般医療機器)は全く新しいカテゴリーの商品で、お年寄りや肩や腰がこっている人、力作業をしている人などに幅広くお役に立つと確信しています。日本中、世界中で広げることが使命なので、たくさんの人に知っていただこうと考えてCMを始めました。出川さんを起用したのは、腰や肩などに悩みがあり、『ガチ』で正直、そして好感度が高いということでオファーしました」
――CMの効果は
「CMを始める前の売上高が月7億円ぐらいでしたが、2月にCMを始めて以降、通販だけで10億円を超えるようになりました。さらにいろいろな小売店からも声をかけていただくようになり、いまは需要に対して生産が間に合っていない状態になっています」
――スポーツチームにも
「卓球のTリーグの『琉球アスティーダ』やバスケットボールBリーグの『三遠ネオフェニックス』などたくさんのチームで着用していただいています。成績が良いチームも多いですね」
海外の関心「確信」
――介護施設や地方自治体にも提供しているそうですね
「介護や支援が必要な人の割合が増えている一方、介護職に就く人が不足しています。そうした人にリライブウェアを着用していただき、身体をサポートさせていただければと考えています。また、高齢者の自立支援を課題とする自治体や、保育士の負担軽減を目指す自治体と共同実証実験も行っています。ある自治体の保育施設で行った実証実験では、身体が楽だという回答をいただいています」
――今後の展開は
「C3サミットという国連関連の会議で講演を行いました。また、カナダでもエビデンスを取得しましたが、かなりいい結果が出ています。いま海外戦略を練っている最中ですが、医療費の抑制が期待できるということなどで関心を持たれているのは間違いないですね」
開発のきっかけは中国武術/乗り越えた壁は砦に
【将棋】将棋はアマチュア三段の腕前だ。「子供時代は小児ぜんそくを持っていて、あまり元気ではなかったこともあり、一人で遊ぶのが好きでした。将棋ぐらいしか遊ぶものがなかったので、一人で先手と後手の両方を差していました」
【コンピューター】高校卒業後、自営業の父親の手伝いをしていたときに、コンピューターとの出会いがあった。
「中古のパソコンを買って遊んでいたんですが、そのうちプログラミングを独学で勉強して、これを仕事にできたら面白いと思い、情報処理の資格を取って就職しました」
コンピューター会社に入ったが、激務もあって2年半ほどで体調を崩して退職した。
「当時は会社で椅子を3つ並べて寝ていましたね」
【中国武術】中国武術との出会いがリライブシャツ開発のきっかけとなった。
「元々体が弱かったので、中国武術の指導を受けるようになりました。そうするうちに、整体師やスポーツトレーナーもしていた武術家仲間から、衣服にテープを貼ることで身体をサポートするということを学びました。これを商品にできないかと考え、ほかの仕事を清算して開発に取り組みました」
【家族】妻と大学生の娘。
【座右の銘】《高い壁を乗り越えたとき、その壁はあなたの砦(とりで)になる》
「私たちは本当に新しいことを始めているので、いろんな壁があるんですよ。その壁を乗り越えると、乗り越えられていない人たちと差ができるので、自分の砦になってくれます。これって本当だよなと実感しています」
【これまでの仕事で最高の瞬間】ユーチューブで配信されているリアリティー番組「令和の虎」に出演したこと。「それまで全然売れなかったリライブシャツが、番組に出たことで1万枚売れました」
【もしこの仕事に就いていなかったら】「クレーム対応ビジネスをやりたいですね。実はクレームの99%はいいクレームなんです。クレームは基本的には〝不満の種〟なので、それを吸い上げて商品やサービスを改善すればいいんです。中には心ないクレーマーもいますが、きっちり対応することによって店員さんを守ることができます。そしてクレーマーのデータベースができると刑事事件にすることもできると考えています。私は困っている人を助けることをビジネスにしてきたので、いじめの撲滅にも取り組みたいですね」
【会社メモ】機能性ウエア「リライブシャツ」やパンツなど関連ウエアや医療機器の製造、販売を手掛ける。本社・仙台市。2008年、機能性補助食品の販売を手掛けるリライブ販売設立、17年身体機能研究所設立。23年両社が合併し、「りらいぶ」設立。24年10月にリライブウェアの販売が累計200万枚を突破した。24年7月期の売上高75億円。従業員数38人。
(ペン/中田達也 カメラ/斉藤佳憲)
■佐々木貴史(ささき・たかし) 1961年7月生まれ、63歳。福島県郡山市出身。仙台市の高校卒業後、父親の事業を手伝い、84年にコンピュータープログラマーとして就職。88年コンピュータソフト会社を起業、99年に青パパイアサプリの通信販売を始める。その後もさまざまな分野のビジネスを立ち上げ、2017年、身体機能研究所(現りらいぶ)を設立し、リライブシャツの開発を手がける。