史上初となる競技場外での開会式。テロ警戒が最大級に引き上げられる中、緊張感が漂う中でのスタートだった。
現地時間午後7時半を過ぎると選手を乗せた船が動き出した。水上開会式とは一体どんなものか。スタート前まではただの川下りだと揶揄する声もあったが、次々と飛び出す歴史、美術をモチーフにした演出に感嘆した。
最も印象的だったのは18世紀のフランス革命で斬首された王妃マリー・アントワネットとみられるキャラクターがメタルの音楽に乗って歌唱したシーン。3年前の東京五輪も現地で開会式を取材したが、洒落が効いて一線を画していた。こういうパフォーマンスは日本ならまず外されるだろう。それをやってのけたフランス人の自由さにおののいた。
会場で最も盛り上がったのはジダン氏が聖火を今季限りでの現役引退を示唆しているナダルに託した瞬間だった。「ジダン!」「ナダル!」と叫ぶ声が何度もこだました。
取材の合間にパリの名所を歩き回って勉強しているが、そのおさらいができてしまうような水上パレードだった。街全体を活用した見事な演出だったといえる。 (山戸英州)