先日、久しぶりにバンコクの歓楽街、パッポンにあるボーイズゴーゴーバーを訪れた。ボーイズゴーゴーバーとは、その名の通りゴーゴーバーの男性版で、マッチョな男性スタッフが接客を行うバーのことである。
2004年に初めてこのエリアを訪れてから、この20年で客層は大きく変わったように感じる。男性向けの店で女性客はほとんどいない印象だったのが、近年では中国や韓国からの女性グループ客を多く見かけるようになり、日本人女性からも「行ってみたい」という声を聞くことが増えた。
ナイトスポットに足を運ぶきっかけは、だいたいは些細(ささい)な興味からだ。「安心して遊べる」と聞いて試した人もいるだろう。しかし、こうした場を訪れた女性がトラブルに巻き込まれるケースも少なくない。特に多いのがセクハラのトラブルだ。ボーイズゴーゴーバーでは通常ショーが行われる。バンコクではショーを行う店は減りつつあるが、リゾート地のパタヤでは今も毎晩どこかで「セックスショー」が行われている。
下着姿や全裸の男性たちによるこうしたショーを一種のパフォーマンスとして楽しめればよいのだが、中には精子をかけられたり、手でイチモツを無理矢理触らせられそうになったりといった過激なショーも存在する。実際、事情を知らずに訪れた日本人女性が、嫌悪感で号泣している場面を目にしたことがある。
また、旅行者が誤解しがちなのがボーイズたちのセクシュアリティである。客の多くが男性のため、「ボーイズ=ゲイ」というイメージを持つ人が少なくない。しかし、彼らの多くは〝ビジネスゲイ〟で実際はノンケ。そのため、女性客が訪れるとセクハラまがいの行為をされることもある。
タイ人の国民性として距離感の近い接客は一般的であり、それを好む人もいるだろう。女性スタッフが接客するゴーゴーバーやバービア(格安のバー)では、彼女たちが男性客に抱きついたりキスをしたりといった過激なサービスが見られることも珍しくない。しかし、同じ行為をゴーゴーボーイたちが行った場合、女性客は嫌悪感を抱くこともあるだろう。
ボーイズゴーゴーバーはタイ独特の文化や雰囲気を持つナイトスポットだが、訪れる際にはその特性やリスクを理解しておくことが重要だ。興味本位で楽しむことは悪いことではないが、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があることも忘れてはならない。特に女性客は事前の情報収集で、自身の身を守る意識を持つことが必要なのだ。
■カワノアユミ 20代を歌舞伎町と海外の夜遊びに費やした元キャバ嬢ライター。現在は、国内外の夜の街の変遷や日本人の海外移住などを取材。著書に、アジア5カ国の日本人キャバクラで9カ月間潜入就職した『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)。X(旧Twitter):https://x.com/ayumikawano/