Infoseek 楽天

お金は知っている 原油高値購入、技術・製品の大量供給でロシア支える習政権 岸田首相は対中金融制裁へ米の背を押せ 決め手はドル取引の打ち切り

zakzak by夕刊フジ 2024年7月5日 11時0分

国家基本問題研究所企画委員の岩田清文元陸上幕僚長によると、昨年6月のウクライナの反転攻勢を失敗に終わらせたのはロシアの強固な陣地に張り巡らされた塹壕(ざんごう)だ。中国が対露輸出した掘削機が決め手になった。中国は掘削機に限らず、ドローン、半導体、ボールベアリング、工作機械のほか、ロケット弾の推進剤となるニトロセルロースなど、軍民両用の技術と製品を大量供給している。

これに対し、先のイタリアでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明は、中国に「深刻な懸念」を表明した程度にとどまる。

中国の対露輸出、輸入とも戦前に比べて6割以上増だ。ロシアは中国からの支援を受け、西側からの金融制裁をかわしている。ロシアの消費者物価上昇率は7%台だが、ウクライナ戦争前の8%台よりも低い。

中国の人民元決済システムや国際金融市場香港を利用して、外貨を獲得できる。この結果、通貨ルーブルの対ドル相場は昨秋を底に、徐々に上昇に転じている。円安が加速する一方の日本とは対照的だ。

西側の盲点になっているのは、中国がロシア産エネルギーを国際相場よりも大幅に高い価格で購入し、ロシアの軍事財源を潤していることだ。ロシア産原油は西側の制裁を受け、国際市場では同じ油種の北海ブレント原油よりも安く売られている。中国の貿易統計によると、ロシア原油の購入額は2022年3月から24年5月までの累計で1359億ドルに上る。筆者が国際市場価格でロシア原油を購入した場合を計算してみると、1155億ドルになる。204億ドル、18%も国際相場よりも多く、中国は代金を支払っていることになる。(グラフ参照)

ストックホルム国際平和研究所によると、前年比のロシア軍事費の増加額は22年に364億ドル、23年に71億ドルで計435億ドルだ。22年3月から24年2月までの2年間での中国のロシア原油代金割増額は176億ドルである。つまり、ウクライナ戦費のうち40%以上は中国のロシア原油高値購入によってまかなわれると推察できる。

この事実だけをとっても、習近平共産党総書記・国家主席がプーチン大統領に約束した「限りない友情」の効果の絶大さがわかる。G7サミットは軍民両面での物資移転停止を要求したが、通常の物言いでは習政権には通用しないだろう。

中国を抑える決め手は、軍事関連、石油などの対露決済に関わる中国の大手商業銀行に対し、ドル取引を打ち切ることだ。習政権が最も恐れるのはこうした金融制裁なのだが、バイデン米大統領は対中ドル制裁がウォール街の混乱を招くことを恐れて逡巡(しゅんじゅん)してきた。

中国はウクライナ戦局に乗じて、台湾、尖閣諸島から南シナ海にかけて攻勢を強めている。中国は、ユーラシア大陸の火勢を日本の目の前に広げようとしている。岸田文雄首相がなりふり構わずすぐやるべき仕事は対中金融制裁へバイデン氏の背を強く押すことだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

この記事の関連ニュース