Infoseek 楽天

大鶴義丹 やっぱりOUTだぜ!! アドリブの天才・赤塚真人さん 厳しい演出で有名、某巨匠監督でさえ「君は好きにやりなさい」 今も耳に残る「義丹ちゃんヨー」

zakzak by夕刊フジ 2024年7月23日 15時30分

真夏日が続くこの7月6日、俳優、赤塚真人さん(享年73)の葬儀が、彼の故郷である茨城県の斎場で営まれた。

名作「幸福の黄色いハンカチ」や「男はつらいよシリーズ」など山田洋次監督作に多数出演、「水戸黄門」「暴れん坊将軍」など時代劇でもおなじみだった。また劇団「裏長屋マンションズ」の座長である。

私は2年前の劇団アルファーの芝居公演でご一緒してからのお付き合いで、芝居以外でも個人的に飲みに行ったり、彼の劇団の芝居を観たりなど親しい付き合いをさせていただいていた。

近い関係になったきっかけは忘れてしまったが、底抜けにおしゃべりで、若い女優さんたちからも好かれる「愛される天才」だった。そしてあらゆることに精通している知識人としての一面もあった。

そして今年4月の舞台公演でも共演をしていた。稽古のときから、決して良いとはいえない体調であったが、それでも「芝居は楽しい、幸せだ」とよく口にしていた。

私の車で稽古場に一緒に向かったことも何度かあった。「義丹ちゃんヨー」と言う、あの渋い声が今でも耳に残っている。

私が役者としての生き方を尋ねると、何時間でも、とても大事なことを語ってくれた。

腹が立った話や自慢話などはあまりせずに「あのときはうれしかったネー」「人には優しくするもんだゼ」と、御恩について語ることが多かった。

俳優として生きるヒントが隠されているような気がした。

赤塚さんと芝居をしたことがある俳優の多くは、彼がアドリブ芝居の天才であると言う。

アドリブ芝居については賛否両論ある。絶対に許さない監督や演出家も多い。

しかし役者に対してとても厳しい演出で有名だった某巨匠監督でさえ、彼のアドリブだけは許していたという話は有名だ。「君は好きにやりなさい」と言われていたらしい。

アドリブ芝居は他の役者の演技を邪魔するリスクが高いのは当然であるが、客にアドリブだと感じ取られた瞬間に、そこまで積み上げてきた物語性を陳腐化してしまう。それゆえにとてもリスクが高い。

だが赤塚真人さんのアドリブは決して物語の邪魔をせず、彼の役柄のリアリティーを深めるだけなのだ。

私見ではあるが、自分勝手にアドリブ芝居をするのではなく、他の役者や物語の流れを高度に計算した上なのだろう。

だからその場にいながら、彼がアドリブ芝居をしていることに気がつかない役者もいる。

後から見直して、初めて彼がアドリブをしていたと分かるのだ。これは理屈ではなく彼の特殊な才能で、決してまねをする気にはならなかった。

赤塚真人さんと二度と芝居ができない悲しみは大きいが、彼の最後の舞台をともにできたことは、私の中の宝物でもある。

■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画「首都高速トライアル」で俳優デビュー。90年には「スプラッシュ」で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。NHK・Eテレ「ワルイコあつまれ」セミレギュラー。

8月29日~9月2日には、東京・三越劇場で上演の「リア王2024」に出演する。

この記事の関連ニュース