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中国経済にトランプショック再び!? 「中国車の輸入阻止」綱領採択、バンス氏との強硬シナリオ 「60%の関税、本気で仕掛ける可能性」

zakzak by夕刊フジ 2024年7月19日 6時30分

11月の米大統領選に向け、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)は、暗殺未遂事件後に求心力を高めている。トランプ氏の返り咲きを最も警戒しているのは中国の習近平国家主席かもしれない。共和党は全国大会で「中国車の輸入阻止」などを盛り込んだ綱領を採択し、中国を標的にした。2017~20年のトランプ政権でも対中貿易戦争が激化したが、今回は副大統領候補に対中強硬派のJ・D・バンス上院議員(39)が起用され、識者は「前回のトランプ政権時より厳しい措置を取る可能性がある」と指摘する。経済が低迷する中国にとって一段の打撃となりかねない。

大統領選の公約となる共和党の綱領では、中国に関して、世界貿易機関(WTO)の規定に基づいて関税を低く抑える「最恵国待遇」を撤回し、「重要な品目の輸入を段階的に停止する」とした。「中国車の輸入を阻止する」とも明記し、ジョー・バイデン大統領が気候変動対策として進めてきた電気自動車(EV)の普及促進を見直す。

米メディアによると、綱領は、トランプ氏が自ら執筆や編集に関与したという。16年の大統領選では党主導で綱領が作成され、20年は綱領が発表されなかったことから、今回はトランプ氏とその陣営が初めて主体的に策定したものとなる。

トランプ氏は、自身が再選された場合の中国からの全輸入品に60%以上の関税を課すことを検討する意向を示している。英BBCによると、副大統領候補のバンス氏は今年3月、中国が国際貿易法に従わなければ、米国の資本市場から排除するという法案を提出した。

米リアル・クリア・ポリティクスが集計した最新の世論調査(6月28日~7月16日)の平均によると、バイデン氏の支持率は44・8%にとどまり、トランプ氏が47・3%でリードしている。

トランプ氏が再選された場合、対中強硬シナリオをどうみるか。

米国の政治・経済に詳しい早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「17~20年の第1次トランプ政権では、マイク・ペンス副大統領のもと、過剰な補助金や知的財産の侵害など、自由経済における中国の不公正をただすことを目的とした制裁が行われた。従来の共和党の保守主義と呼ばれるスタンスで、経済的に合理性もあった。ただ、今回のトランプ―バンス路線は思考回路が異なる。予測は難しいが、第1次政権よりも厳しくなるだろう」と指摘する。

それでは「第2次トランプ政権」が誕生した場合、どのような策を打ち出すことが考えられるのか。

渡瀬氏は「中国製品に対する60%の関税も本気で仕掛けてくる可能性もある。EVに関しても中国から米国に輸入されること自体を嫌うだろう。以前は中国に是正の期待を込めて関税をかけ交渉相手としてきたが、それはなくなる。他国からの侵食や、貿易赤字自体を嫌悪する『自立主義』『自前主義』という理念が強まり、経済的に非合理であっても政策として打ち出されてもおかしくない」との見方を示す。

中国経済の落ち込みは深刻だ。24年4~6月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は前年同期比4・7%増となり、政府の通年目標である「5・0%前後」に届かなかった。そもそも中国の経済統計の信憑性には疑問ももたれているが、不動産市況や消費が低迷している実態は隠しようもない。

石平氏 中国共産党崩壊につながる

中国共産党は18日まで中長期の経済政策を討議する重要会議、第20期中央委員会第3回総会(3中総会)を開催。経済の下押し圧力に直面するなか、習主席は「中国式現代化」の推進を打ち出すが、EVなどハイテク分野では米国や欧州連合(EU)と対立を深めている。

習主席は今春、欧州を歴訪したほか、ドイツやオランダなどの首脳と会談した。トランプ氏の返り咲きを見越して先手を打ったとの指摘もあるが、それでも習政権にとって「第2次トランプ政権」の誕生は大きなリスク要因だ。

中国事情に詳しい評論家の石平氏は「中国経済を牽引(けんいん)してきた不動産は不況が長引いており、輸出頼みになるが、高額な関税をかけられれば米市場から事実上、完全排除されることになる。その場合、欧州が輸出のはけ口になるが、やがてEUも米国並みの関税に、ある程度追従せざるを得なくなるだろう。1980年代のロナルド・レーガン政権がソ連を経済的に追い詰めて崩壊に導いたが、トランプ氏の政策は中国共産党の崩壊を招くことにつながるのではないか」と語った。

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