佐高信(評論家)/前田朗(ダーバン+20:反レイシズムはあたり前キャンペーン共同代表、平和力フォーラム)/本山央子(アジア女性資料センター代表理事/ジェンダー研究)/安田浩一(ジャーナリスト)/矢野秀喜(強制動員問題解決と過去清算のための共同行動)/与那覇恵子(名桜大学元教授、沖縄・琉球弧の声を届ける会共同代表)/渡辺美奈(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館(wam)」)…。
各氏の名前を見て、何の集まりか分かるだろうか。
慰安婦、米軍基地、科研費(科学研究費助成事業)、反原発、ジェンダーなどに取り組んできた面々だ。共通項は「杉田水脈氏は衆議院議員にふさわしくない」との署名の呼びかけ人(抜粋)であることだ。
先の衆院選(10月15日公示、同27日投開票)前の同7日に共同声明を出して、「日本の市民社会は、杉田氏を選挙に立候補させないこと、立候補しても当選させないことをめざして、声を上げていきましょう」と呼びかけた。
自民党保守派の杉田水脈前衆院議員が、慰安婦問題、科研費などに果敢に取り組んできた証左でもある。これに反応したのが当の杉田氏で自身のX(旧ツイッター)に同9日、「この方々、10年くらい前から全く変わってないのでは? 毎回、毎回、お疲れ様です」と投稿した。
ブロガーの藤原かずえ氏もXで同13日、「極左活動家と左翼新聞に言葉尻を捉えられて徹底的にイチャモンつけられてきましたが、誤解を恐れずに発言する杉田水脈議員は日本の議会に必要な存在」と強調した。
自民党の内規で「比例単独での立候補は原則2回まで」となっていることもあり、杉田氏は彼らの呼びかけとは関係なく、衆院選での立候補を見送り、来年の参院選を目指して活動を続けている。
私は今月25日、杉田氏とネット番組「ニッポンジャーナル」に出演した。地元・山口県でのお祭りで神輿を担いだ翌日で肩が痛いと言いながらも元気な様子で、兵庫県知事選などについて語った。
今のところ杉田氏は参院選比例代表の候補として公認されていない。自民党では業界団体から支援を受けた組織内候補が上位に並ぶが、22年の参院選では特定団体の支援を受けずに戦った漫画家の赤松健氏が比例代表候補の中で最多得票だったように変化も起きている。杉田氏も支援団体集めとともに、SNSを通じた発信に力を入れている。
杉田氏は政治資金パーティー券問題で役職停止6カ月の処分を受けた。ただ、同じ不記載でも公認された候補もおり、杉田氏を公認しない理由にはならない。
杉田氏が出馬すれば「アンチ杉田」たちがリベラルメディアとともに騒ぎ立てることだろう。リベラルメディアと良好な関係を築いてきた石破茂首相(総裁)がそういうことを敬遠するかもしれない。
だが、党幹部の一人は「公認しないで保守派からたたかれるよりも、自民党に投票しない人たちにたたかれる方がいい」と語る。杉田氏が公認されるかは石破執行部の党内保守派に対するスタンスを図る意味でも注目される。 (産経新聞特別記者 有元隆志)