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日本の解き方 筆者と日経新聞の主張が「真逆」な理由 「近隣窮乏化」の歴史的事実 「円安はプラス、利上げはマイナス」経済理論に基づき主張

zakzak by夕刊フジ 2024年7月12日 6時30分

夕刊フジの読者の方から編集局あてに、「日経新聞の論調と筆者の論調が正反対だ」という手紙が相次いで届いたという。なぜ本コラムと日経の論調が「真逆」になるのだろうか。

まず筆者が本コラムで書いてきたことは、円安になると日本経済の成長率は高まるという歴史的事実だ。これは、古今東西で「近隣窮乏化」といわれ、自国通貨安は自国経済に有利だが他国経済には不利となることで知られている。

各国や国際機関のマクロ経済モデルでも、その効果は数量的に確認されている。そのため、自国通貨安について他国から文句が来るのであれば対応が必要だが、文句がないなら放置し、国益を追求した方がいい。

また、今の日本のインフレ目標政策から、利上げは時期尚早であり、まして円安対策としての利上げは金融政策として間違っていると、筆者は言っているだけだ。

一方、読者の方が指摘するのは、「円安が試す利上げ耐性」と「税収最高 かりそめの財政改善」という記事だ。

この記事を読むかぎり、「近隣窮乏化」を正しく理解していないフシがある。一般に記者は目の前の現象を記事にして日本経済を語る傾向があるが、ミクロの現象は必ずしもマクロでも正しいとはかぎらない。

たしかに、円安で苦しむ人はいるが、マクロでみれば成長率上昇の要因だ。そのため、企業収益向上から、法人税・所得税収が伸びる。財政改善は「かりそめ」ではなく円安からの当然の帰結である。

「利上げ耐性」という記事も、本来は放置すべき円安を、是正すべきものとして、利上げに固執しているようだ。そもそも今のインフレ率なら利上げを要する状況ではない。のみならず、為替のために利上げするのはインフレ目標下の金融政策のセオリーに反する。

記事の中には「利上げにより、政府と日銀合計の利払い費が膨らむ」との記述もあるが、ミスリーディングだ。これまでの「政府の利払い費が膨らむ」という記述に比べると一歩前進かもしれないが、いっそのこと「日銀を含む広義の政府でのネット利払い費」まで考慮すべきだ。これは利上げでもほとんど上昇しないということは、政府全体の「総合資産負債管理」から導き出される。筆者が、30年ほど前に初代室長をしていた財務省資金管理室では、そうした分析を行っていた。

なお、円安は放置すべきであるが、円安で苦しむ人への対策をするのであれば、税収が増えており、外国為替資金特別会計(外為特会)の含み益もあるので、容易に実現できる。

一般に銀行などの金融機関は、収益面からみて「利上げ賛成」だ。となると、金融機関相手の取引も多いメディアは、利上げを指向し、そのための方便として、円安を「悪いもの」として扱ってきたとも考えられる。

一方、筆者は標準的な経済理論に基づいて、「日本経済に円安はプラス、利上げはマイナス」と主張しているにすぎないのだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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