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号砲鳴った「ポスト岸田」の条件 次期衆院選、財政金融政策、対米関係、安全保障…崖っぷち自民 このままでは「史上最低の総裁選」に

zakzak by夕刊フジ 2024年8月15日 15時16分

岸田文雄首相が14日、自民党総裁選への不出馬を表明したのを受け、「ポスト岸田」争いの号砲が鳴った。若手から重鎮まで複数の候補が意欲を見せ、推薦人20人の確保に向けて動き始めている。ただ、次の総裁には、党の信頼を失墜させた「政治とカネ」問題のケジメや、次期衆院選に向けた「選挙の顔」としての資質、同盟国・米国の新大統領との関係構築、株大暴落を繰り返さない財政金融政策、有事勃発を見据えた外交・安全保障手腕など、数多くの条件が求められる。1億2000万人を超える国民の運命を託せるのは誰なのか。

岸田首相出馬せず

「今回の総裁選挙では、自民党が変わる姿、『新生自民党』を国民の前にしっかりと示すことが必要だ」

岸田首相は14日の記者会見でこう語った。LGBT法の拙速な法制化や、派閥裏金事件への対応などで、党内外の支持を失った張本人だが、党が直面する問題は理解しているようだ。

現時点で、「ポスト岸田」候補として名前が挙がるのは、世論調査で人気が高い石破茂元幹事長(67)と、党の刷新感が期待される小泉進次郎元環境相(43)、保守層の支持が厚い高市早苗経済安保相(63)、党実務を仕切る茂木敏充幹事長(68)、前回総裁選にも出馬した河野太郎デジタル相(61)、中堅・若手を中心に待望論がある小林鷹之前経済安保相(49)らだ。

次期総裁の条件の中で、まず国民的人気はどうか。

産経新聞・FNN(フジニュースネットワーク)が7月20、21両日に実施した合同世論調査で、「次の自民党総裁に誰がふさわしいか」を聞いたところ、トップは石破氏(24・7%)で、2位は小泉氏(12・1%)、3位は高市氏(7・5%)、4位は河野氏(7・0%)と続いた。

外交・安全保障政策も注目される。

茂木氏は、安倍政権時代、経済再生担当相として、トランプ米政権のロバート・ライトハイザー通商代表と日米貿易協議に臨み、「タフネゴシエーター」と呼ばれた。第4次安倍内閣から第1次岸田内閣では外相を務めた。

高市氏は松下政経塾時代、米国会議員のスタッフを経験している。保守政治家・安倍晋三元首相の遺志を継承し、経済安全保障上の機密情報へのアクセスを官民の有資格者に限る「セキュリティ・クリアランス(SC)」制度の法制化を成し遂げた。

石破氏と河野氏には防衛相経験がある。石破氏は7日に出版した新著『保守政治家 わが政策、わが天命』(講談社)で、現在の自衛隊を「国防軍」に改めて憲法に明記すべきなどと記している。

唯一の同盟国・米国との関係も重要だ。特に、11月の大統領選に向けて、民主党のカマラ・ハリス副大統領と、共和党のドナルド・トランプ前大統領が接戦を演じている。

島田名誉教授「トランプ氏なら、安倍氏に近い高市氏を信頼」

米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は「トランプ氏なら、盟友の安倍氏に近い高市氏を信頼するだろう。安倍氏の信頼を得られなかった石破氏を信用するかは疑問だ。『脱炭素』を推進する河野氏とは意見が合わない。ハリス氏なら、LGBTや環境問題などで、小泉氏や河野氏と平仄(ひょうそく)が合うのではないか」と語った。

経済政策も注目される。

石破氏、茂木氏、河野氏は、金融緩和と財政出動、成長戦略の「3本の矢」による経済政策「アベノミクス」とは一線を画す。日銀は7月の追加利上げで、金融緩和策から方針転換した。

石破氏は7日のロイター通信のインタビューで、「金融緩和という基本的な政策を変えないなかで徐々に金利のある世界を実現していくのは正しい政策だ」と語った。

茂木氏は「日銀は段階的な利上げの検討も含めて、金融政策を正常化する方針を明確に打ち出すことが必要」と発言した。河野氏も海外メディアの取材に、円安対策としての利上げに言及している。

一方、高市氏は主宰する勉強会にアベノミクスの指南役、本田悦朗元内閣官房参与を講師に招いた。過去に円安のメリットや、大規模金融緩和継続を訴えるなど安倍氏の経済政策姿勢を踏襲する。

小林吉弥氏指摘このままでは「史上最低の総裁選」

上武大学の田中秀臣教授(日本経済論)は「経済状況が十分に回復しない段階で利上げをするのは『緊縮』の表れだ。経済政策のセンスを感じない。高市氏は経済政策では最も期待できる」と評価する。

さまざまな条件を踏まえて、「ポスト岸田」候補らは、立候補に必要な推薦人20人の確保に向けて動き出している。

今後、岸田政権の「主流派」である麻生太郎副総裁や、「非主流派」の菅義偉前首相など、キングメーカーの動きが注目されそうだが、自民党は国民の信頼を取り戻せるのか。

政治評論家の小林吉弥氏は「誰が新総裁になっても、よほど国家観や大局観のある『骨太の政権構想』でも示さない限り、支持率の回復は見込めないだろう。このままでは、『史上最低の総裁選』を迎えることになる。新総裁が次期衆院選に持ち込めば、自民党が下野する可能性もあり得る。自民党の志ある若手が党を割り、核となって保守政党を立ち上げ、二大政党制にするムーブメントをつくってもいいのではないか。刷新を求める国民の支持を得られるチャンスは今しかないのではないか」と語った。

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